ファンド市場は日本で本当に育つのか―制度・市場・投資家の三層構造から考える

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ここまで、REIT、インフラファンド、ベンチャーファンドといった個別分野の課題を見てきました。いずれも投資対象としての潜在力は大きい一方で、市場としては十分に拡大しているとは言えない状況です。

では、日本のファンド市場は今後本当に育つのでしょうか。本稿では、制度・市場・投資家という三つの観点から、その可能性を整理します。


制度は整いつつあるが「使える制度」にはなっていない

日本のファンド市場に関する制度は、形式的には一定の整備が進んでいます。

REIT制度の確立、インフラファンドの創設、ベンチャーファンドの制度改革など、投資対象を拡張する枠組みは用意されています。しかし、実際の市場では、その制度が十分に活用されているとは言えません。

背景にあるのは、「制度として存在すること」と「実務として使えること」の差です。

収益制約、税制の複雑性、組成コストの高さなどにより、制度が現実の投資行動に結びついていない状況が見られます。


市場構造の問題―流動性とスケールの不足

ファンド市場の拡大を阻むもう一つの要因は、市場そのものの構造です。

銘柄数が少なく、取引量も限定的であるため、価格形成が不安定になりやすく、投資対象としての魅力が十分に発揮されていません。

市場に厚みがないために投資家が参入しにくく、投資家が少ないために市場が拡大しないという循環が生じています。

この構造は、単に制度を整えるだけでは解決できず、市場参加者の拡大と流動性の確保が不可欠となります。


投資家行動の特徴―「分かりにくいもの」は選ばれない

日本の個人投資家の行動も、市場の発展に影響を与えています。

投資信託や株式と比較して、ファンド市場の商品は仕組みが複雑であり、収益構造やリスクの理解に一定の知識を要します。この「分かりにくさ」は、投資判断の障壁となります。

結果として、シンプルで理解しやすい商品に資金が集中し、ファンド市場への資金流入が限定的になります。


三層構造としての停滞要因

ここまでの議論を整理すると、日本のファンド市場の停滞は以下の三層構造として捉えることができます。

・制度が柔軟性を欠き、実務で使いにくい
・市場が小さく、流動性が不足している
・投資家が理解しにくく、参加が進まない

この三つが相互に作用することで、市場の成長が抑制される構造が形成されています。


突破口はどこにあるのか

ファンド市場が成長するためには、この三層構造のどこかに変化が生じる必要があります。

第一の可能性は、制度改革です。収益源の多様化や税制の簡素化により、実務で活用しやすい制度に転換できれば、市場の拡大につながる可能性があります。

第二は、市場の拡大です。新規上場や投資対象の多様化により、銘柄数と流動性が増加すれば、投資家の参入が促されます。

第三は、投資家行動の変化です。長期投資や分散投資の重要性が浸透すれば、ファンド市場への資金流入が進む可能性があります。


資産運用立国との関係

政府が掲げる資産運用立国の実現において、ファンド市場の役割は重要です。

株式市場だけでは提供できない投資機会、例えばインフラや未上場企業への投資は、ファンドを通じて初めて実現されます。

したがって、ファンド市場の発展は、投資対象の質的な拡張という意味で、資産運用立国の中核的要素となります。


結論

日本のファンド市場は、制度・市場・投資家の三層にまたがる構造的課題を抱えています。

現状のままでは大きな成長は期待しにくいものの、いずれかの層に変化が生じれば、連鎖的に市場が拡大する可能性もあります。

ファンド市場は単なる補完的な存在ではなく、資本市場の多様性を支える重要な基盤です。その発展の可否は、日本の資産運用のあり方そのものに影響を与える論点といえます。


参考

・日本経済新聞(2026年4月7日朝刊)
ファンド市場、制度改善が必要(私見卓見) 森・浜田松本法律事務所 外国法共同事業パートナー 尾本太郎

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