共働き世帯は、世帯収入の高さという強みを持つ一方で、その収入が将来にわたって維持される保証はありません。
第2回で見たように、パワーカップルの合理性は条件付きのものです。したがって資産形成においても、「収入が続く前提」からの脱却が不可欠となります。
本稿では、共働き世帯における最適な資産形成戦略を整理します。
前提となる考え方の転換
まず重要なのは、資産形成の前提を見直すことです。
従来は、
・収入が増え続ける
・共働きが維持される
・キャリアが中断しない
という暗黙の前提がありました。
しかし現実には、
・どちらかの収入が減少する
・働き方が変わる
・ライフイベントでキャリアが止まる
といった変化が起こり得ます。
したがって、資産形成は「将来の不確実性への備え」として設計する必要があります。
生活防衛資金の厚めの確保
共働き世帯では、生活防衛資金を軽視しがちです。
収入が高く安定しているように見えるため、
・現金保有を抑える
・投資に過度に振り向ける
といった傾向が見られます。
しかし実際には、
・同時に収入が減少するリスク
・支出水準が高いことによる固定費負担
があるため、単身世帯よりもむしろ厚めの現金確保が必要です。
目安としては、
・最低でも生活費の6か月分
・可能であれば1年分
を確保しておくことが望ましいといえます。
住宅ローンは「片働き基準」で考える
共働き世帯で最も重要な意思決定の一つが住宅購入です。
多くの場合、
・世帯収入を前提に借入額を決定する
という判断がなされますが、これはリスクが高い設計です。
より合理的なのは、
・どちらか一方の収入でも返済可能な水準に抑える
という考え方です。
これにより、
・キャリア中断
・転職
・働き方の変更
といった変化にも対応できる柔軟性が生まれます。
資産運用は長期・分散を基本とする
共働き世帯は投資余力が大きいため、資産運用の効果を最大化しやすい立場にあります。
ただし重要なのは、
・短期的な収益追求ではなく
・長期的な資産の安定成長
を重視することです。
具体的には、
・積立投資の継続
・資産クラスの分散
・過度なリスクテイクの回避
が基本となります。
収入が高いほどリスクを取れるように見えますが、実際には支出も大きいため、安定性を重視する方が合理的です。
支出のコントロールが資産形成を左右する
資産形成において見落とされがちなのが、支出管理の重要性です。
高収入世帯では、
・生活水準の上昇
・固定費の増加
が自然に進みます。
しかし、支出の固定化は資産形成の最大の障害となります。
特に注意すべきは、
・住宅費
・教育費
・保険料
といった長期的に固定化されやすい支出です。
これらを適切な水準に抑えることが、資産形成の成否を大きく左右します。
「収入依存型」から「資産依存型」への転換
最終的に目指すべきは、収入に依存しない家計構造です。
すなわち、
・労働収入に頼る割合を徐々に下げ
・資産からの収益を増やす
という方向への転換です。
これにより、
・働き方の自由度が高まる
・リスクへの耐性が強化される
といった効果が期待できます。
共働きで得られる高収入は、この転換を早期に実現するための「手段」と位置づけるべきです。
結論
共働き世帯の資産形成は、単に収入の高さに依存するものではありません。
むしろ重要なのは、
・収入の不確実性を前提とすること
・支出を適切にコントロールすること
・資産を着実に積み上げること
です。
パワーカップルという状態は永続的ではありません。しかし、その期間を活用して資産基盤を構築できれば、その後の人生の安定性は大きく高まります。
収入に依存する家計から、資産に支えられる家計へ。この転換こそが、共働き世帯にとって最も合理的な戦略といえます。
参考
日本経済新聞 朝刊 2026年4月4日
高年収夫婦(ともに1000万円以上)の世帯が減少