自動車に関する税制が大きく転換しようとしています。2026年度から、自動車購入時に課されてきた環境性能割が廃止される一方で、電気自動車(EV)に対する課税強化の方向性が打ち出されています。
一見すると減税と増税が同時に進むように見えますが、その背景には税制の構造的な見直しがあります。本稿では、自動車税制の変化を整理し、その意味を考察します。
環境性能割廃止の概要
環境性能割は、自動車取得時に課される地方税であり、燃費性能などに応じて税率が決まる仕組みでした。
今回の改正により、この環境性能割は廃止されます。これにより、新車購入時の税負担は軽減されることになります。
ただし、地方税である以上、この廃止は地方財政に直接影響します。そのため、減収分については当面、国が全額補填する仕組みが採られます。
つまり、納税者側から見れば負担軽減ですが、財源としては単に国に付け替えられたに過ぎません。
なぜ廃止されるのか 税制の歪みの整理
環境性能割は、もともと消費税率引き上げに伴う自動車取得税の代替として導入された経緯があります。
しかし、その後の状況変化により、次のような問題が指摘されてきました。
・取得時課税が消費行動を抑制する
・環境性能の評価基準が複雑で分かりにくい
・EV普及との整合性が取りにくい
特に大きいのは、取得時に課税する仕組みそのものの見直しです。
現在の税制は、「保有」よりも「取得」に重く課税する構造でしたが、これを転換しようとする動きが背景にあります。
EV課税強化の方向性
一方で、今回の改正ではEVに対する課税強化が明確に打ち出されています。
具体的には次の2点です。
種別割(毎年課税)の見直し
地方税である自動車税(種別割)において、EVについては車両重量に応じた課税強化が検討されています。
これまでEVは環境配慮の観点から優遇されてきましたが、重量が大きい車両が多いことから、道路負担の公平性が論点となっています。
重量税の上乗せ(2028年以降)
国税である自動車重量税についても、2028年以降、EVに対して税負担を上乗せする方針が示されています。
これは、ガソリン車が負担してきた税収(燃料課税など)の減少を補う意味合いを持ちます。
税制の本質は「公平性の再設計」
今回の改正を整理すると、単なる減税や増税ではなく、税負担の配分を見直す動きと捉えるべきです。
ポイントは次の通りです。
・取得時課税から保有時課税へシフト
・環境優遇から利用実態ベースへシフト
・燃料課税依存から新たな課税体系へ
特に重要なのは、EVが普及すればするほど、従来の税収構造が成り立たなくなる点です。
ガソリン税に依存した仕組みは、EV時代には持続しません。
そのため、EVも含めた「道路利用者全体で負担する仕組み」へ移行しようとしています。
今後の論点 EV時代の課税モデル
今後の自動車税制では、さらに踏み込んだ議論が想定されます。
・走行距離に応じた課税(走行課税)
・電力への課税強化
・車両重量や道路負荷に応じた課税
これらはすべて、「誰がどれだけ道路インフラを使ったか」に基づく課税へ近づく方向です。
つまり、自動車税は「環境政策」から「インフラ利用料」へと性格が変わりつつあります。
結論
環境性能割の廃止は、単なる減税ではなく、自動車税制全体の再設計の入口に過ぎません。
取得時課税の縮小と引き換えに、保有・利用に応じた課税が強化されていく流れは今後も続くと考えられます。
EV優遇も恒久的なものではなく、普及段階を終えれば見直されるのは必然です。
自動車税制は今、大きな転換点にあり、その本質は「公平性」と「持続可能性」の再構築にあります。
参考
日本経済新聞 2026年4月1日 朝刊
自動車関連税制見直しに関する記事