確定申告のデジタル化が進み、マイナンバーカードによる申告が標準となりつつあります。
しかし、高齢納税者にとっては、利便性よりも不安のほうが大きい場合があります。
・暗証番号を覚えていない
・スマートフォン操作に慣れていない
・電子証明書の更新を理解していない
デジタル化が進むほど、支援設計の質が問われます。
本稿では、高齢納税者へのデジタル支援を実務レベルでどのように設計すべきかを整理します。
1.支援の前提認識
まず重要なのは、
「高齢=ITが苦手」と一律に決めつけないことです。
スマートフォンを日常的に使いこなしている方もいれば、まったく触れない方もいます。
したがって、支援は画一的ではなく、レベル別設計が必要です。
2.三段階モデルによる支援設計
第1段階:自立型
・スマホ操作に慣れている
・マイナカード保有
・暗証番号も把握
この層には、
チェックリスト提供と事前確認案内が中心になります。
ポイントは、
「送信完了確認」と「受信通知保存」の徹底です。
第2段階:伴走型
・操作は可能だが不安が強い
・暗証番号管理が不安定
この層には、
・事前面談での暗証番号確認
・電子証明書有効期限確認
・端末テスト実施
・送信操作の立会い支援
が有効です。
実務上は「申告日当日支援」ではなく、
1~2月中の事前確認日を設けることが重要です。
第3段階:代理設計型
・スマホ操作不可
・暗証番号失念
・カード管理が困難
この場合、
・紙申告との併用判断
・代理送信体制整備
・カード預かり管理ルール策定
が必要になります。
カードを預かる場合は、
・預り簿の作成
・保管場所の明確化
・返却確認書
など、内部統制上のルールを整備することが不可欠です。
3.実務トラブル予防の仕組み化
高齢納税者支援で重要なのは、
「個別対応」ではなく「仕組み化」です。
例えば、
1.1月中に電子証明書期限確認案内を送付
2.暗証番号確認チェックリスト配布
3.申告前リハーサル日設定
4.受信通知保存確認
これを年間ルーティン化します。
確定申告期に慌てない体制が鍵です。
4.心理的支援の視点
高齢納税者の不安は、技術だけではありません。
・「間違えたらどうなるのか」
・「詐欺に遭わないか」
・「情報が漏れないか」
という心理的不安が大きいのです。
したがって、
「こちらで確認します」
「この画面が出れば完了です」
と可視化して説明することが重要です。
安心感の提供も、実務の一部です。
5.今後の制度環境を踏まえた対応
ID・パスワード方式の新規発行停止や、閉庁日対応の縮小により、
・対面支援は減少
・デジタル前提の環境
へと移行しています。
今後は、
「紙に戻す」選択肢が徐々に限定される可能性もあります。
したがって、
・早期のマイナカード取得支援
・電子証明書更新時期の周知
・家族との情報共有設計
も視野に入れる必要があります。
6.税理士実務への示唆
高齢納税者支援は、単なる操作補助ではありません。
それは、
・デジタル移行期のリスク管理
・滞納防止
・期限内申告確保
と直結します。
支援設計が甘いと、
・期限後申告
・延滞税
・信用低下
につながる可能性があります。
一方、仕組み化された支援は、
顧問契約の付加価値にもなります。
結論
マイナカード時代の高齢納税者支援は、
・レベル別設計
・事前確認の仕組み化
・心理的不安への配慮
・内部統制整備
が鍵となります。
デジタル化は不可逆です。
だからこそ、
「操作を教える」から「安心を設計する」へと、
支援の質を高めることが求められます。
高齢納税者への支援は、これからの税務実務の重要な柱になるといえます。
参考
・税のしるべ 2026年2月16日号
・国税庁 e-Tax関連資料
