高齢期就労と家族(配偶者・遺族年金)への影響

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高齢期就労は、本人の手取りや年金額の問題として語られることが多いですが、その影響は本人にとどまりません。配偶者の年金や、将来の遺族年金にも波及します。

特に、夫婦いずれかが厚生年金の受給者である場合、高齢期の働き方は家族全体の年金設計に影響します。本稿では、高齢期就労が配偶者および遺族年金に与える影響を整理します。

1 配偶者加給年金との関係

老齢厚生年金を受給する際、一定の要件を満たす配偶者がいる場合には「加給年金額」が加算されます。

加給年金は、配偶者が65歳未満であることなどが要件です。配偶者が65歳に到達すると、原則として加給年金は終了し、配偶者側に振替加算が移る仕組みとなります。

高齢期就労そのものが直ちに加給年金を停止させるわけではありません。しかし、在職老齢年金により老齢厚生年金の一部が支給停止となる場合、加給年金も連動して停止対象となります。

つまり、給与が高水準で年金が全額停止となれば、加給年金も受け取れなくなります。この点は見落とされやすい論点です。

2 配偶者自身の社会保険との関係

高齢期就労により本人の収入が増加すると、世帯全体の収入構造が変わります。

配偶者が被扶養者である場合、扶養認定の基準を超える収入が生じると、健康保険の扶養から外れる可能性があります。ただし、年金受給者の場合は個別の判定基準が適用されるため、収入区分の整理が必要です。

また、配偶者が自らも就労する場合、双方の厚生年金加入状況により将来の年金構成が変わります。

高齢期就労は世帯単位で設計すべきテーマです。

3 遺族厚生年金への影響

遺族厚生年金は、亡くなった被保険者または受給者の報酬比例部分に基づいて算定されます。

69歳まで厚生年金の被保険者として就労すれば、その期間分の報酬比例部分が将来の年金額に反映されます。これは遺族厚生年金の基礎にもなります。

したがって、高齢期の追加加入期間は、配偶者の将来給付額にも影響します。

一方、70歳以降は厚生年金保険料を負担しないため、報酬比例部分の積み増しは行われません。この違いは、長期的に見れば遺族年金額にも影響します。

4 在職老齢年金と遺族年金の交錯

在職老齢年金による支給停止は、本人の老齢厚生年金に対する調整です。遺族年金そのものに直接影響するわけではありません。

しかし、現役時の報酬水準や加入期間は、将来の遺族年金額に反映されます。

したがって、

・支給停止による「今の受取額」
・加入継続による「将来の遺族給付」

は別の論点です。

短期的な受給額だけで判断するのではなく、世帯全体の保障設計として考える必要があります。

5 繰下げ受給との関係

老齢年金を繰下げ受給した場合、増額された年金額は生涯にわたり支給されます。

この増額部分は遺族厚生年金の算定基礎には直接反映されませんが、本人の受給額増加は家計全体の安定に寄与します。

繰下げは、本人単独の選択ではなく、配偶者の年齢や健康状態、他の収入源を踏まえて検討すべき事項です。

6 家族設計としての高齢期就労

高齢期就労は、

・本人の手取り
・世帯の社会保険構造
・配偶者の年金水準
・将来の遺族保障

を同時に動かします。

個人単位の損得ではなく、世帯単位の保障設計として位置付けることが重要です。

結論

高齢期就労は、本人だけの問題ではありません。配偶者加給年金、遺族厚生年金、世帯の社会保険構造に影響を与えます。

制度は個人単位で設計されていますが、生活は世帯単位で営まれます。高齢期の働き方を検討する際には、配偶者の年齢、年金加入歴、健康状態を含めた総合的な視点が不可欠です。

人生100年時代における高齢期就労は、家族保障の再設計でもあります。制度の理解を前提に、世帯全体の安定を視野に入れた設計が求められます。

参考

税のしるべ 2026年2月23日
「4月から在職老齢年金制度を見直し、給与のみの場合との控除額の差の問題が顕在化」

厚生労働省 遺族厚生年金制度の概要資料
日本年金機構 加給年金および振替加算に関する資料

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