駐車場代を福利厚生費で処理するとどうなるか―通勤手当との境界と税務リスクの整理

税理士
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通勤に関する費用のうち、駐車場代の取扱いは実務上判断に迷いやすい論点です。
特に、会社が駐車場代を負担する場合、それを福利厚生費として処理しているケースも少なくありません。

しかし、令和8年度税制改正により駐車場代の非課税枠が制度化されたことで、この処理の妥当性は改めて見直しが必要となっています。
本稿では、駐車場代を福利厚生費として処理した場合の税務リスクについて整理します。


福利厚生費と給与課税の基本的な考え方

まず前提として、福利厚生費として認められるためには、

  • 全従業員を対象としていること
  • 社会通念上相当な範囲であること
  • 特定の個人への経済的利益ではないこと

といった要件を満たす必要があります。

一方で、給与課税の判断は非常にシンプルです。

  • 従業員個人に帰属する経済的利益があるか

この一点で判断されます。

つまり、福利厚生費として処理していたとしても、

  • 実態が「個人の通勤費用の肩代わり」であれば
  • 原則として給与課税の対象

となります。


駐車場代はなぜ福利厚生費と認められにくいのか

駐車場代は、一見すると業務に必要な費用のようにも見えます。
しかし税務上は、次のように整理されます。

  • 通勤はあくまで私的行為
  • その費用は原則として従業員負担

このため、

  • 駐車場代は「通勤費用の一部」
  • 個人に帰属する支出

と評価されます。

したがって、

  • 特定の従業員のみが利用する駐車場
  • 個別に契約された駐車場

について会社が費用負担する場合、それは

  • 個別的な経済的利益の供与

と判断されやすく、福利厚生費としての要件を満たしにくい構造となっています。


通勤手当として整理しない場合のリスク

駐車場代を通勤手当として処理せず、福利厚生費で処理した場合、次のようなリスクが生じます。

① 給与課税の指摘リスク

税務調査では、

  • 実態として従業員の通勤費用を負担しているか

が確認されます。

この結果、

  • 福利厚生費として処理していた駐車場代が
  • 給与と認定される

可能性があります。


② 源泉所得税の追徴リスク

給与と認定された場合、

  • 源泉徴収が行われていなかった

ことになるため、

  • 不足分の源泉所得税の納付
  • 不納付加算税や延滞税の発生

といったリスクが生じます。

給与課税の認定は、企業側の負担に直結する点が重要です。


③ 社会保険料への波及リスク

給与として認定されると、

  • 標準報酬月額への算入

が問題となります。

これにより、

  • 健康保険・厚生年金の保険料増加
  • 遡及修正の可能性

といった影響が生じます。

税務だけでなく、社会保険にも波及する点は見落とされがちです。


④ 社内制度の不整合リスク

通勤手当として整理していない場合、

  • 非課税限度額の管理ができない
  • 課税・非課税の区分が不明確

となります。

結果として、

  • 同じ通勤形態でも取扱いが異なる
  • 従業員間の不公平

といった問題が発生する可能性があります。


会社契約の駐車場でも結論は変わらない

実務上よくあるのが、

  • 会社が駐車場を契約
  • 従業員に割り当て

というケースです。

この場合でも税務上は、

  • 従業員が利用している以上
  • その経済的利益は従業員に帰属

と判断されます。

したがって、

  • 福利厚生費ではなく
  • 通勤手当(給与)として整理

する必要があります。

形式ではなく実態で判断される典型例といえます。


適切な実務対応の方向性

これらを踏まえると、実務上は次の対応が求められます。

① 通勤手当として制度設計する

  • 駐車場代を含めた通勤手当制度を整備
  • 支給基準を明確化

② 非課税限度額の管理を徹底する

  • 月額5,000円の上限を適用
  • 超過部分は課税処理

③ 証憑に基づく金額確認を行う

  • 契約書や領収書等で金額を確認
  • 継続的なチェック体制を構築

④ 会計処理と税務処理を一致させる

  • 福利厚生費と給与の区分を明確化
  • 税務上の取扱いと整合性を取る

制度改正が示す実務へのメッセージ

今回の改正は、単に非課税枠を拡大しただけではありません。

むしろ、

  • 駐車場代も通勤手当として整理すること
  • 実態に基づく課税を徹底すること

を明確にしたものといえます。

つまり、

  • 「福利厚生費で処理すればよい」という曖昧な対応は
  • 今後は通用しにくくなる

方向性が示されています。


結論

駐車場代を福利厚生費として処理することは、一見すると簡便な処理に見えますが、税務上は大きなリスクを伴います。

重要なのは、

  • 通勤費用は原則として給与課税の対象であること
  • 非課税とするためには通勤手当としての枠組みが必要であること

という基本原則です。

今回の制度改正を踏まえると、

  • 駐車場代は通勤手当として整理する
  • 非課税限度額の範囲内で適切に処理する

という対応が、最も合理的かつ安全な実務対応となります。

制度の拡張は、同時に管理責任の強化を意味します。
形式ではなく実態で判断されるという原則を前提に、制度設計と運用の見直しが求められています。


参考

・税のしるべ 2026年4月27日号
通勤手当の非課税限度額改正でQ&A、会社が駐車場を契約して費用を負担した場合の取扱いなども示す

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