2024年から完全義務化された電子取引データ保存をはじめ、
電子帳簿保存法(電帳法)は確定申告と不可分の関係になりました。
2026年からの電子申告義務化を前に、帳簿・証憑・申告データの連携が実務上の焦点となっています。
本稿では、電子帳簿保存法とe-Taxを組み合わせた最新の運用フローと最終チェックポイントを解説します。
電子帳簿保存法の3つの区分
電子帳簿保存法は、保存方法に応じて次の3区分に整理されています。
| 区分 | 内容 | 保存対象 |
|---|---|---|
| ① 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・決算書を電子保存 | 青色申告帳簿・決算書 |
| ② スキャナ保存 | 紙の領収書・請求書をスキャンして電子保存 | 紙で受け取った証憑 |
| ③ 電子取引データ保存 | メールやクラウドで授受したデータを電子保存 | PDF・CSV・電子請求書 |
特に③「電子取引データ保存」は完全義務化され、紙出力保存では認められません。
クラウド会計や電子請求書サービスを活用し、データのまま保存する体制が求められます。
e-Taxとの連動ポイント
電子帳簿保存法対応を進める際、e-Taxとの連携が重要な意味を持ちます。
次の3つの点を押さえておくと、電子申告までの流れがスムーズです。
① 電子帳簿データの添付省略
電帳法に準拠して保存された帳簿・証憑は、e-Taxでの提出を省略可能です。
つまり、保存義務さえ果たしていれば、添付ファイルとして送信する必要はありません。
税務署から求められた際は、電子データを提示・送信すれば足ります。
② マイナポータル連携による控除証明書の統合
マイナポータル連携を設定すれば、生命保険料控除・医療費通知・ふるさと納税などの証明書が自動取得され、
e-Taxに自動反映されます。電子帳簿保存法上の「電子的保存」とも整合する仕組みです。
③ 帳簿データの自動転送
クラウド会計ソフトでは、電子帳簿保存データを直接e-Taxに送信できるAPI連携が整備されています。
特に「弥生」「freee」「Money Forward」は、電帳法準拠フォーマットに対応済みで、
帳簿保存と申告送信をワンストップで行える体制が整っています。
実務上の注意点
電子帳簿保存法とe-Taxを連動させる際は、次のような点でミスが起きやすくなります。
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 改ざん防止機能が未対応 | タイムスタンプ・履歴管理がない保存方法 | 対応ソフトまたはクラウド保存に切替 |
| 検索機能が不十分 | 取引日・金額・相手先で検索不可 | ファイル名・フォルダ名の統一ルール化 |
| 紙と電子が混在 | 一部紙出力して保存 | 完全電子化を徹底、紙原本は廃棄可 |
| 税務署提出時に形式不備 | CSVやPDFが不統一 | 電帳法フォーマットで一括出力 |
電子帳簿保存法は「形式・整合性のチェック」が命です。
保存データと申告データが一致していることを確認しておくと、税務調査時にも安心です。
2026年以降の制度統合
令和7年度税制改正大綱では、電子帳簿保存法とe-Taxの一体運用が明記されました。
【統合の方向性】
- e-Tax送信済み帳簿を自動で電子保存対象に登録
- 電子請求書(Peppol形式)との相互認証
- マイナポータル連携による控除証明書の完全自動反映
- 国税庁が認定する「電子帳簿保存クラウド」の標準化
これにより、2026年には「帳簿→証憑→申告」が一気通貫でデジタル管理される見通しです。
紙帳簿やUSB保存による対応は、今後段階的に縮小される方向です。
自社・個人で確認しておきたい最終チェックリスト
- 会計ソフトは電子帳簿保存法対応(タイムスタンプ・検索機能付)か
- 電子取引データ(請求書・領収書)を紙出力していないか
- マイナポータル連携で控除証明書の自動取得ができているか
- 帳簿・証憑の保存期間(7年)を満たす体制になっているか
- e-Taxの送信履歴・受信通知を適切に保存しているか
これらを定期的に点検しておくことで、改正対応漏れを防ぐことができます。
結論
電子帳簿保存法とe-Taxは、2026年以降、実務上一体化された制度として運用されます。
単なる保存義務の遵守にとどまらず、帳簿作成・証憑管理・申告送信の一連の流れをデジタルで完結させることが求められます。
今後は、「紙を添付しない」ではなく、「紙そのものを作らない」業務プロセスが標準になります。
電子化を早期に整備することが、将来の税務リスクを抑え、業務効率を高める最も確実な投資となるでしょう。
出典
・国税庁「電子帳簿保存法Q&A」
・国税庁「e-Taxの利用手続」
・デジタル庁「電子取引データの保存方法ガイド」
・中小企業庁「電子化対応の実務ガイド」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
