金価格乱高下の時代にどう向き合うか――ドル信認と貴金属投資の構造を読む

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近年、金価格の値動きが一段と激しくなっています。史上最高値を更新した直後に急落するなど、乱高下を繰り返す局面も見られます。円建て価格も一時1グラム3万円を超え、これまで経験したことのない水準に達しました。

こうした動きの背景には、単なる需給だけでは説明できない構造的な要因があります。本稿では、金価格変動の背景にあるドルへの信認、中央銀行の動き、そして投資家としての向き合い方を整理します。


金価格を動かす三つの力

金価格の上昇要因としてまず挙げられるのは、世界的なインフレです。物価が上昇すれば通貨の実質価値は低下します。その結果、実物資産である金の相対的な価値が高まります。

第二に、地政学リスクです。国際紛争や政治的緊張が高まると、安全資産とされる金に資金が流入しやすくなります。金は歴史的に「無価値にならない資産」として認識されてきました。

第三に重要なのが、ドルへの信認です。近年の金価格急騰の背景には、米国の金融政策や中央銀行の独立性に対する懸念がありました。中央銀行の独立性が揺らぐとの見方が強まれば、通貨への信頼も低下します。その代替として金が選好される構図です。

金は単なる商品ではなく、通貨の信認と密接に結びついた資産であることが理解できます。


中央銀行の買いが需給を支える

近年、新興国の中央銀行による金購入が続いています。背景には、外貨準備の分散という戦略があります。

ロシアの外貨準備凍結を受け、米国債などドル資産への依存リスクが再認識されました。その結果、金の保有を増やす動きが強まりました。中央銀行は投機目的ではなく準備資産として保有するため、価格が上昇しても容易に売却しません。

この構造は、金需給を長期的にタイトにする要因となります。短期的な価格調整はあっても、需給面の下支えは継続する可能性があります。


円建て価格は為替の影響を受ける

国内で金価格を見る場合、ドル建て国際価格に為替相場が乗算されます。円安が進行すれば、ドル価格が横ばいでも円建て価格は上昇します。

近年の円安局面では、ドル建て金価格以上に円建て価格が上昇しました。国内投資家にとっては、金投資が「為替リスクを含む資産」である点を忘れてはなりません。

金価格は「商品価格×為替」という二重構造で決まるという点が実務上重要です。


プラチナ・銀との違い

プラチナや銀も価格変動が目立ちますが、金とは性格が異なります。

金は投資・中央銀行保有という通貨的需要が大きいのに対し、プラチナや銀は工業用需要の比率が高い資産です。そのため、世界景気や産業動向の影響をより強く受けます。

特に銀は市場規模が小さく、取引量も限定的であるため、価格変動が大きくなりやすい特徴があります。値上がり後の反動も大きくなりがちです。

投資対象としては、価格安定性という観点から金の方が相対的に扱いやすい面があります。


投資としてどう設計するか

金価格は今後も上下動を繰り返す可能性があります。短期的な価格予測は困難です。

ただし、金は株式との相関が比較的小さく、ポートフォリオ全体の価格変動リスクを抑制する効果が期待できます。この分散機能こそが金投資の本質です。

すでに高値圏にある現状では、一括投資よりも少額積立やETFを活用した分散取得が現実的な選択肢となります。価格変動を前提に設計する姿勢が重要です。


結論

金価格の乱高下は、単なる投機の結果ではありません。インフレ、地政学リスク、そしてドルへの信認という構造的要因が絡み合っています。

中央銀行の買いが需給を支え、為替が円建て価格を左右し、他の貴金属とは異なる役割を担う金。こうした全体像を理解した上で、資産配分の一部として位置付けることが求められます。

金は値上がりを狙う商品というよりも、通貨や株式とは異なる性格を持つ分散資産です。乱高下の時代だからこそ、設計思考で向き合う必要があります。


参考

日本経済新聞 2026年2月25日夕刊
「<マネー相談 黄金堂パーラー>貴金属投資(上)乱高下の金価格」

日本経済新聞 2026年2月25日夕刊
「金の需給は今後もタイト」

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