設備投資促進税制を読み解く(第3回)

政策
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先日、日経新聞の朝刊に「減価償却費を一括計上設備投資促す」という記事が載っていましたので、今回もこの記事について、考えていきたいと思います。

1.制度の理念と現場のギャップ

新しい投資促進税制は「企業規模を問わず」幅広い設備投資を対象にする方針です。
これにより、中小企業やスタートアップも恩恵を受けられることが期待されています。

しかし実際には、
「制度はあっても、現場で使いこなせない」という問題がしばしば起こります。
その背景には、資金力や情報格差といった構造的な課題が潜んでいます。

2.中小企業のハードル

中小企業がこの制度を使う際に直面するハードルは大きく分けて3つです。

①資金調達の壁
そもそも投資資金を準備できなければ、税制優遇を受ける前に断念せざるを得ません。
銀行融資やリースを組める企業は限られています。

②税務知識・手続きの複雑さ
即時償却や税額控除は、正しい会計処理と申告が前提です。
顧問税理士のサポートが不可欠ですが、制度内容を十分に理解していないと機会を逃してしまいます。

③適用範囲の理解不足
「ハード投資だけ」と誤解し、実は対象となるソフトやデジタル投資を見落とすケースも想定されます。

3. スタートアップの特有の課題

スタートアップの場合はさらに特殊です。

・赤字企業が多い
 税額控除は法人税が発生している企業にしか効きません。
 成長期で赤字が続くスタートアップでは、即時償却だけではメリットが限定的です。

・投資対象が「無形資産」中心
 ソフトウェアや人材投資が中心で、従来の制度では軽視されがちでした。
 今回の制度で無形資産が対象に含まれる点は歓迎ですが、詳細設計次第で実際の使いやすさが変わります。

4. 金融機関・専門家の役割

この制度を「中小企業・スタートアップの成長加速」にまで広げるためには、金融機関や専門家の役割が欠かせません。

・銀行・信用金庫:制度を前提とした融資スキームの提案
 税理士・会計士:制度の周知と、シミュレーションによる経営判断支援

・行政:申請・適用要件の簡素化、情報発言の強化
 特に「わかりやすい説明」と「使いやすい手続き」がなければ、中小企業は制度を活用できません。

投資促進税制は、中小企業やスタートアップにとって「成長のブースター」になり得ます。
しかし、その効果を実際に享受できるかどうかは、資金調達力・専門家の支援・制度設計のシンプルさに左右されます。
制度を「使える企業」と「使えない企業」に分けてしまえば、格差拡大につながりかねません。
ここをどう解決できるかが、今後の大きな課題です。

ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回(第4回)は、「国際比較:米国・ドイツの投資税制と日本」をテーマに、各国の制度との違いや日本が取り残されるリスクについて考えてみます。

次回以降も、引き続きよろしくお願いいたします。

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