親のNISAをどう整理するか⑤(最終回)相続後の運用をどう続けるか ― “第二のNISA設計”のすすめ

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親が長年かけて育てたNISA資産。
相続手続きを終えると、NISAの非課税枠は消滅し、
相続人の課税口座に移管されます。

しかし、それは「終わり」ではありません。
相続後こそ、次の資産形成のスタート地点。

受け取った株式や投資信託をどう活かすか。
それが「第二のNISA設計」のテーマです。


🧭 Step1:まず“受け継いだ資産”の棚卸しから

相続後の第一歩は、冷静な現状把握です。
感情や思い出よりも、数字で全体像を整理しましょう。

📋 棚卸しのチェックリスト

  • 相続で受け取った銘柄・投資信託の一覧
  • 評価額と購入価格(死亡日の終値)
  • 分配金・配当履歴
  • 現金残高・その他の金融資産

この一覧を作るだけで、「どの資産を保有・売却すべきか」の判断がつきやすくなります。

💡ワンポイント
金融機関によっては「相続資産一覧表」や「評価明細書」を発行してくれます。
これをExcelなどに転記して“自分のポートフォリオ”として再設計しましょう。


💰 Step2:売却か保有か ― 判断基準を明確にする

相続した株式・投信を「そのまま持つ」か「売却する」か。
ここでの判断は、故人の思い出ではなく、相続人の目的・リスク許容度で決めましょう。

▪️売却を検討したほうがよいケース

  • 個別株が集中しており、リスクが高い
  • 銘柄が古く、成長性が乏しい
  • 投資信託のコストが高い(信託報酬1.0%以上)
  • 自分の生活資金や老後計画と合わない

▪️保有・再投資を検討するケース

  • 配当・分配金が安定している
  • 長期的なテーマ(インデックス・ESG・世界株など)
  • 自分のリスク許容度に合っている

FP的アドバイス
「親の投資方針」よりも「自分の人生設計」に沿って考えること。
相続した瞬間から、それはあなた自身のポートフォリオになります。


🧮 Step3:“第二のNISA”をどう設計するか

新NISAは生涯非課税で、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能です。
相続した資金をうまく再投資することで、“第二の非課税資産づくり”が可能になります。

📘 例:相続資産300万円をNISAに再投資する設計イメージ

投資内容割合コメント
つみたて投資枠(年間120万円)eMAXIS Slim全世界株など40%長期成長軸。自動積立で運用効率化。
成長投資枠国内高配当ETF・インフラファンド40%配当収入を再投資。安定運用を重視。
現金・短期投資MRF・個人向け国債など20%リスク調整用。相場変動に備える。

🔍 ポイント

  • “相続=まとまった資金”を“分散投資の好機”と捉える
  • 一度に全額を投資せず、「時間分散(ドルコスト平均法)」を意識する
  • 配当金や分配金を「再投資」すれば、長期で非課税メリットが積み上がる

🪙 Step4:「配当で生活」ではなく「再投資で育てる」

相続した世代(多くは40~60代)は、
「配当金で生活を支える」よりも「老後に備えて資産を育てる」時期にあります。

したがって、
受け取った配当金・分配金をそのまま使うのではなく、
NISA内での再投資を基本方針にしましょう。

  • 配当金を自動再投資する投信(再投型)を選ぶ
  • 分配金を積立原資に充てる
  • 年1回、ポートフォリオをリバランス

📈「相続資産を“減らさず使う”」よりも
「“育てながら使う”」の発想が、長期運用の鍵になります。


🧑‍💼 Step5:税・相続・運用の“トリプル視点”を持つ

NISAを相続したあとの資産運用では、
税金・相続・運用の3つの視点をバランスよく持つことが重要です。

視点内容具体策
売却益・配当課税の確認年間譲渡益を確定申告で管理
相続次世代への承継準備自身のNISAも「終活リスト」に記載
運用リスクとリターンの最適化年齢・目的別ポートフォリオ設計

「親のNISA」をきっかけに、
“自分の相続準備”も始める
これが、最も実務的で持続的な資産管理の姿です。


💬 FP・税理士からのメッセージ

親から相続したNISAは、
単なるお金ではなく、“生きた学びの資産”です。

  • 長期投資の大切さ
  • 分散と継続の効果
  • 非課税制度の恩恵と限界

それらを次の世代にどうつなぐか。
「第二のNISA設計」は、家族の金融リテラシーを高める絶好の機会でもあります。


🧾 まとめ ― 相続NISAを“未来のNISA”に変える

ステップ内容キーアクション
1棚卸し相続資産を一覧化
2判断売却・保有の基準を設定
3設計新NISAで再投資
4再投資配当・分配金を育てる資金に
5継承自身の相続・終活も見据える

🔑 相続されたNISAは“消える制度”ではなく、“続く仕組み”に変えられる。
そのための設計図こそが「第二のNISA設計」です。


出典・参考

  • 日本経済新聞「NISA、相続は課税口座」(2025年10月25日)
  • 金融庁「NISA統計(2024年末)」
  • 国税庁「相続税の財産評価基本通達」
  • 税理士法人チェスター・レガシィ解説資料
  • 筆者FP事務所「NISA再設計プラン事例」より

📘 シリーズ総まとめ
1️⃣ NISAを相続したらどうなる?(仕組み編)
2️⃣ 親のNISAをどう整理するか(手続き編)
3️⃣ NISA×相続税(評価・課税編)
4️⃣ 遺言・生前贈与で備える(事前対策編)
5️⃣ 相続後の運用をどう続けるか(再設計編)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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