親のNISAをどう整理するか③ ― 「NISA×相続税」評価と申告のポイントを図解で解説!

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新NISAが広がる中で、親世代の投資を引き継ぐケースが増えています。
その際に必ず関係してくるのが、「相続税の評価」です。

「NISAは非課税なんだから、相続税もかからないんでしょ?」

――そう思っている方は要注意です。
NISAの非課税は“運用益や配当”に対しての話であって、
相続税の課税対象から外れるわけではありません。


🧾 相続税の評価の基本 ― 「死亡日時点の時価」

相続税では、亡くなった日の時点での資産価値(時価)を基準に評価します。
NISA口座の中身(株式・投資信託など)も、すべてこの原則に従います。

評価対象評価方法備考
上場株式死亡日の終値複数上場市場がある場合は最も高い市場価格
投資信託死亡日の基準価額公募型の場合、証券会社が自動算出
現金残高残高そのままNISA口座内の未投資資金も含む

✅ ポイント
NISA口座であっても「課税資産」として評価します。
非課税扱いになるのは所得税・住民税上の話であり、
相続税の計算とは別です。


📘 図解:NISA相続の全体像

【死亡日】
  ↓(NISA口座終了)
 非課税で課税口座へ払い出し(死亡日の終値で評価)
  ↓
【相続税評価】
 死亡日時点の時価で申告対象へ計上
  ↓
【相続人の課税口座へ移管】
 相続人の取得価額=死亡日の終値
  ↓
【売却】
 売却価格-死亡日の終値=譲渡益(所得税課税)

🧮 具体例で見る評価と課税の流れ

例)故人がNISA口座でA社株を保有していた場合

項目金額内容
購入価格500円故人がNISAで購入
死亡日の終値1,000円この時点でNISA終了・課税口座へ移管
相続税評価額1,000円相続財産として申告
相続人が後日売却1,300円差額300円が課税対象(譲渡所得)

📍まとめると:

  • 死亡時点までの値上がり分(+500円)は非課税(NISAの恩恵)
  • 死亡日以降の値上がり分(+300円)は課税(譲渡所得)
  • 相続税は1,000円×株数で評価して申告

🏦 相続税申告での実務ポイント

① 評価明細書を添付

証券会社から発行される「相続時評価明細」や「残高証明書」を基に計算します。
死亡日や価格算出根拠を明記しておくと、税務署からの確認がスムーズです。

② NISA資産も「金融資産の一部」として申告

NISA・特定・一般口座の区分を問わず、すべての金融資産を合算して申告します。
口座区分を分けて考えないよう注意。

③ 「評価損」が出ている場合

死亡日時点で評価額が下がっている場合も、その価格で申告します。
相続後に値上がりしても、それは相続人の譲渡益として扱われます。


👪 相続人に多い誤解と落とし穴

よくある誤解実際の取扱い
「NISAだから相続税もかからない」✕ 相続税の非課税ではない
「相続人のNISAに移せば引き続き非課税」✕ 制度上できない(課税口座へ移管)
「死亡後すぐに売却しても税金がかからない」△ 売却時期次第。死亡日以降の値上がり分は課税対象
「評価証明がないので概算でいい」✕ 必ず金融機関の評価明細で裏づけを取る

💬 税理士・FPの視点から ― “NISAの相続”で損をしないために

NISAの相続対応は、「所得税の非課税」と「相続税の課税」という
異なる税目の仕組みを整理して理解することが大切です。

💡ワンポイントメモ

  • NISA=「運用益の非課税制度」であって、財産そのものは課税対象
  • 評価基準は「死亡日の時価」
  • 売却時の課税計算は「死亡日の終値」が取得価格になる

親の資産を正しく引き継ぐためには、
相続発生前に「どの金融機関でどんな商品を持っているか」を把握しておくことが重要です。
“親のNISA棚卸し”を早めに行うことが、円滑な相続への第一歩になります。


📌 まとめ ― 「非課税」と「課税」の境界を整理しよう

区分適用範囲税の扱い
NISA期間中売却益・配当非課税(所得税・住民税)
死亡後(相続発生)相続財産全体課税(相続税)
相続人の売却譲渡益課税(所得税・住民税)

🔎 NISAは“税金がかからない制度”ではなく、
「どのタイミングでどの税がかかるか」を整理しておく制度
です。


出典・参考

  • 日本経済新聞「NISA、相続は課税口座」(2025年10月25日)
  • 金融庁「NISA統計(2024年末)」
  • 国税庁「相続税の財産評価基本通達」
  • 税理士法人チェスター/レガシィ 各解説資料

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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