親のNISAをどう整理するか② ― 相続後の実務と“やってはいけないこと”

FP
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前回の記事では、
👉「NISA口座は相続できない」
👉「死亡日で非課税が終了し、課税口座へ移される」
という基本を整理しました。

今回は、実際に親のNISAを引き継いだあとに、何をどう整理すればよいのかを、実務の流れと注意点に沿って解説します。


🪪 Step1:まず金融機関へ「死亡の連絡」をする

親が亡くなったら、まずは取引していた証券会社や銀行へ早めに連絡を入れましょう。
この時点で、口座の入出金や売却などは一時的に停止されます。

各社は以下のような書類を送付してきます。

  • 相続上場株式等移管依頼書
  • 非課税口座開設者死亡届出書(NISAを保有していた場合)
  • 被相続人の除籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本・印鑑証明書 など

👉 NISAの資産は「死亡日の終値」で評価され、
課税口座(特定口座または一般口座)に払い出されます。

この時点で、NISAの非課税期間は終了します。


💰 Step2:相続人名義の「課税口座」へ移管

金融機関では、相続人ごとに資産を分割し、
故人の課税口座 → 相続人の課税口座 へ移管します。

ただし、相続人が同じ金融機関に口座を持っていないと手続きが進められません。

💡ポイント
死亡の連絡をした際に、「相続人が口座を持っていない場合は同時に開設を進めたい」と伝えておくとスムーズです。

移管完了までには、1~2カ月かかることもあります。
この間、価格変動があっても売却などの取引はできません。


📈 Step3:売却・保有の判断を冷静に行う

相続手続きが完了すると、ようやく相続人が売却や保有の判断をできるようになります。
ここで注意したいのは――

  • 故人が保有していた株や投信が「どのような目的」で買われていたか
  • 相続人自身のリスク許容度と一致しているか

を冷静に見極めることです。

特に、個別株中心のポートフォリオだった場合、相続人にとってはリスクが大きいケースも。
「とりあえず全部売る」ではなく、分散とタイミングを意識して判断しましょう。


🧾 Step4:相続税・所得税の対応を忘れずに

相続税の申告では、死亡日時点の時価で評価します。
NISAで運用していたものも含めて、相続税の課税対象資産にカウントされます。

また、相続人がその後に売却した際は、

  • 相続人の取得価額:死亡日の終値
  • 売却価額との差額:譲渡所得として課税(約20%)

となります。

この際、故人の生前に発生していた含み益分は課税されないことを確認しておくと安心です。


🚫 やってはいけない3つのこと

相続の現場では、以下の“うっかりミス”がよく見られます。

  1. 死亡前に代理で売却してしまう
     → 名義人が亡くなった時点で取引権限は消滅します。
      後日トラブルの原因になるためNG。
  2. NISA資産を相続人のNISAに移そうとする
     → 制度上できません。必ず課税口座を経由します。
  3. 相続人間で“とりあえず分け合い”してしまう
     → 証券資産は名義変更の履歴が残るため、正式な遺産分割協議書が必要です。

💬 税理士・FPからのアドバイス

NISA口座の相続対応は、「非課税」という言葉のイメージから、
つい“税金とは無縁”と思われがちです。

しかし実際には、

  • 相続税の評価
  • 譲渡所得税の計算
  • 名義変更の手続き
    など、税務と手続きの両面に細かいルールがあります。

ワンポイント

  • 死亡日が「年の途中」でも、死亡日までの非課税は維持。
  • NISA資産も相続税評価の対象になる。
  • 相続人が売却する際は、取得価格=死亡日の終値。

🔚 まとめ:NISAも“終活資産”のひとつに

新NISAの登場で、親世代の投資が急速に広がりました。
その結果として、「投資を引き継ぐ相続」が増えています。

親が築いた資産をどう整理し、
自分のライフプランにどう組み込むか。

それを考えることは、単なる「相続対策」ではなく、
家族で取り組む“資産のバトンリレー”の第一歩です。


出典・参考

  • 日本経済新聞「NISA、相続は課税口座」(2025年10月25日)
  • 金融庁「NISA口座に関する統計(2024年末)」
  • 税理士法人レガシィ/チェスター 各税理士コメント

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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