成年後見制度は、法律や福祉の分野にとどまらず、財産管理や資産承継といった領域にも深く関わる制度です。その中で、税理士の関与は不可欠なものとなりつつあります。
しかし現実には、税理士の関与の在り方は必ずしも明確ではありません。後見人として関与するケースもあれば、顧問先の相談に対応するにとどまるケースもあります。
本稿では、成年後見制度における税理士の役割を整理し、その本質を再定義します。
税理士の関与の現状
成年後見制度において、税理士が後見人として選任されるケースは一定数存在しますが、その数は決して多いとは言えません。
また、多くの場合、税理士の関与は財産管理や税務申告といった業務に限定される傾向があります。
これは、制度の中で税理士の役割が明確に位置付けられていないことや、専門分野の違いによるものと考えられます。
財産管理の専門職としての役割
税理士の最も基本的な役割は、財産管理に関する専門的な支援です。
成年後見制度においては、本人の財産を適切に管理し、その収支を把握することが重要となります。この点において、税理士の専門性は大きな価値を持ちます。
特に、複雑な資産構成や事業を有する場合には、専門的な知識に基づいた管理が不可欠となります。
税務との関係
成年後見制度と税務は密接に関連しています。
所得税や相続税の申告、財産評価、資産の移転など、制度の運用に伴ってさまざまな税務問題が発生します。
これらに適切に対応するためには、税務の専門知識が不可欠であり、税理士の関与が重要となります。
意思決定支援への関与
近年の制度改革により、税理士の役割は財産管理にとどまらなくなっています。
意思決定支援という観点から、本人の意思や価値観を踏まえたうえで、どのような選択肢があるのかを整理する役割が求められるようになっています。
例えば、資産の活用方法や承継のあり方について、単に最適解を提示するのではなく、本人の意向を反映した形で選択肢を提示することが重要となります。
他専門職との連携
成年後見制度は、多くの専門職が関与する分野です。
弁護士や司法書士、社会福祉士、医療・介護関係者などとの連携が不可欠となります。
税理士は、財産管理や税務の専門家として、これらの専門職と協働しながら、総合的な支援を行う役割を担います。
後見人としての関与
税理士が後見人として選任される場合、その役割はさらに広がります。
単なる財産管理にとどまらず、本人の生活全体を見据えた支援が求められます。
このため、税務や会計の知識に加えて、制度全体への理解や他分野との連携が重要となります。
リスクと責任
成年後見制度に関与することは、一定の責任を伴います。
財産管理の適正性や意思決定の妥当性について、後に検証される可能性があるため、慎重な対応が求められます。
また、他の専門職との役割分担を明確にし、責任の範囲を適切に整理することも重要です。
税理士の強みとは何か
成年後見制度において、税理士が発揮できる強みは、財産の全体像を把握できる点にあります。
収入、支出、資産、負債といった情報を総合的に分析し、将来の見通しを立てることができる点は、他の専門職にはない特徴です。
この強みを活かすことで、より実効性の高い支援が可能となります。
役割の再定義
これまでの税理士の役割は、税務申告や会計処理といった業務が中心でした。
しかし、成年後見制度においては、それに加えて、意思決定を支える役割が求められています。
この変化は、単なる業務範囲の拡大ではなく、専門職としての役割の再定義と言えます。
結論
成年後見制度における税理士の役割は、財産管理や税務にとどまらず、意思決定支援や他専門職との連携へと広がっています。
制度の変化に対応するためには、従来の枠組みにとらわれず、自らの役割を見直すことが重要です。
税理士としての専門性を活かしつつ、制度の中でどのような価値を提供できるのかを考えることが求められます。
次回は、財産管理と身上保護の関係に焦点を当て、制度の核心部分をさらに掘り下げていきます。
参考
東京税理士協同組合教育情報事業 配布資料 全国統一研修会 成年後見制度に関する資料
最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 令和7年3月