社宅は給与よりどれだけ有利なのか 手取りと企業負担で比較する制度の実態

税理士
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福利厚生の中でも、社宅制度は「税務上有利」といわれる代表的な制度です。
しかし実際にどの程度有利なのかは、具体的に比較してみないと見えにくい部分でもあります。

本稿では、給与として支給する場合と社宅制度を利用する場合を比較し、その差がどこから生まれるのかを整理します。


比較の前提条件

ここでは、次のようなシンプルなケースを想定します。

・会社が月10万円の住宅支援を行う
・従業員は給与所得者
・税率や社会保険料は一般的な水準

この条件のもとで、「給与支給」と「社宅制度」の違いを見ていきます。


給与として支給した場合

まず、住宅手当として現金で10万円を支給した場合です。

この場合、10万円はそのまま給与として課税対象になります。

従業員側では、

・所得税
・住民税
・社会保険料

が課されます。

仮に合計で30%程度の負担とすると、手取りは約7万円程度になります。

一方、企業側もこの10万円に対して社会保険料の負担が発生します。
したがって、企業の実質負担は10万円を上回ることになります。


社宅制度を利用した場合

次に、同じ10万円を社宅制度で支出した場合です。

会社が住宅を借り上げ、従業員に貸与します。
従業員は「賃料相当額」として、例えば月2万円を負担するケースを想定します。

この場合、

・従業員負担:2万円
・会社負担:8万円

となります。

そして重要なのは、この8万円部分について、

・従業員に課税されない
・社会保険料の対象にならない

という点です。

結果として、従業員は2万円の負担で10万円相当の住宅に住めることになります。


手取りベースでの比較

ここまでを整理すると、次のようになります。

給与支給の場合
・会社負担:約10万円+社会保険料
・従業員手取り:約7万円

社宅制度の場合
・会社負担:約8万円
・従業員実質メリット:約8万円相当

同じ会社負担で比較すると、社宅制度の方が従業員の実質的な受益が大きくなります。

この差が、社宅制度が「有利」とされる理由です。


なぜこの差が生まれるのか

この差の本質は、「課税されるかどうか」にあります。

給与は原則としてすべて課税対象です。
一方、社宅は一定の要件を満たすことで、課税対象から外れる部分が生まれます。

つまり、

・給与はフル課税
・社宅は一部非課税

という構造の違いが、そのまま手取りの差につながっています。


企業側の視点での違い

企業側にとっても、この違いは重要です。

給与支給の場合は、

・社会保険料負担が増える
・コストが膨らむ

一方、社宅制度の場合は、

・社会保険料の対象外となる部分がある
・同じコストで高い効果を出せる

という特徴があります。

したがって、企業にとっても効率的な支出となります。


それでも万能ではない理由

もっとも、社宅制度には限界もあります。

・利用できる従業員が限定される
・公平性の問題が生じやすい
・制度設計や管理が必要

また、賃料相当額の設定を誤ると、給与課税されるリスクもあります。

さらに、住宅に関する支援に偏るため、すべての従業員にとって最適とは限りません。


制度選択の考え方

したがって重要なのは、「どちらが得か」ではなく、「どう使い分けるか」です。

例えば、

・若手や転勤者には社宅制度
・全社員には住宅手当

といった組み合わせも考えられます。

制度は単独で考えるのではなく、人材戦略と一体で設計する必要があります。


結論

社宅制度は、給与と比較して手取り・企業負担の両面で有利になりやすい制度です。

その背景には、課税・社会保険の取り扱いの違いがあります。

ただし、そのメリットは制度設計に大きく依存します。
設計を誤れば課税リスクや不公平を生む可能性もあります。

重要なのは、単なる節税ではなく、企業の人材戦略に適合した形で制度を設計することです。

社宅制度は「どれだけ得か」ではなく、「どう使うか」で価値が決まる制度といえます。


参考

日本経済新聞 2026年3月27日 朝刊
法定外福利費 昨年4.8%増 企業独自の支出分 人材定着へ充実

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