未成年NISAの導入は、資産形成の早期スタートや贈与・相続対策の新しい選択肢として大きな期待を集めています。しかし、実際に制度を運用していくにあたっては課題も多く存在します。ここでは、制度設計や利用上の注意点を整理し、今後の展望を考えてみます。
課題1:金融リテラシー格差の拡大
最大の懸念は、金融リテラシー格差がさらに広がる可能性です。
- 金融教育に熱心な家庭 → 未成年NISAを積極的に活用
- 金融知識が乏しい家庭 → 制度を知らずに利用機会を逃す
結果として、「投資を早く始めた層」と「投資をしない層」の資産格差が、若い世代から拡大しかねません。
制度の導入と並行して、学校や地域での金融教育が重要になってきます。
課題2:親主導での形式的利用
暦年贈与と組み合わせれば「相続対策」にもなりますが、注意が必要です。
- 実際には親が管理しているのに、形式だけ子ども名義にしている
- 子どもが成人後に「自分のお金」と認識せず、家庭内トラブルになる
こうした「名義だけの口座」にならないよう、子ども自身の理解を伴う活用が欠かせません。
課題3:制度の安定性への不安
過去のジュニアNISAが短期間で廃止されたことを覚えている人も多いでしょう。
「せっかく始めても、また数年で制度変更されるのでは?」という不安が、利用拡大を妨げる可能性があります。
制度が安定して存続することこそが、長期投資に不可欠です。
課題4:証券会社や金融機関の体制整備
未成年NISAが始まれば、金融機関にも次のような課題が出てきます。
- 親子での口座開設手続きの煩雑さ
- 投資商品やリスク説明のわかりやすさ
- 個人情報保護やセキュリティ対策(特に証券口座乗っ取りの増加に対応)
制度利用を広げるには、利用者目線のサポート体制が不可欠です。
展望1:家庭での金融教育が浸透
制度が広がれば、家庭内で「お金の会話」が自然に増えます。
「投資は特別な人のもの」ではなく「身近なお金の管理方法」として受け入れられる可能性があります。
展望2:相続・贈与制度との一体化
今後は、
- 暦年贈与
- 相続時精算課税
- 教育資金贈与制度
といった制度とどう連携させるかが課題です。未成年NISAがその「受け皿」として機能すれば、資産承継の流れがよりスムーズになります。
展望3:長期的な資産形成社会の定着
未成年から投資を始めることで、20年、30年後には大きな成果を享受できる世代が登場するでしょう。これは単なる「制度利用」ではなく、日本全体の長期投資文化の定着につながる可能性があります。
まとめ──課題を超えて「制度を文化に」
未成年NISAの導入は、課題とリスクを抱えながらも、
- 家族でのお金の教育
- 贈与や相続のスムーズな資産移転
- 長期投資文化の定着
といった大きな可能性を秘めています。
大切なのは、制度を「税制のテクニック」ではなく、子どもと社会全体の未来を育てる仕組みとして活用する視点でしょう。
👉参考:2025年9月18日付 日本経済新聞「つみたてNISA『未成年に対象拡大を』日証協会長が要望」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

