2026年度の税制改正要望に盛り込まれた「つみたてNISAの未成年拡大」。これは単に若年層の資産形成を促すだけでなく、親から子への資産移転や相続税対策の新しい形を生み出す可能性があります。今回は「贈与」と「相続」の視点から掘り下げてみましょう。
暦年贈与の基本と課題
まず、よく使われる暦年贈与のおさらいです。
- 1人あたり年間110万円まで非課税
- 例えば親が子に毎年100万円を贈与すると、10年間で1,000万円を移せる
シンプルで分かりやすいため、教育資金や結婚資金の援助に使われるケースが多いです。
ただし課題もあります。
- 「名義預金」とみなされるリスク(親が実質的に管理していると税務署から指摘される可能性)
- 相続開始前の贈与は持ち戻し(後述の3年→7年ルール)
「3年ルール」から「7年ルール」へ
これまで相続税法では、相続開始前3年以内の贈与は「相続財産に持ち戻す」仕組みになっていました。
つまり、亡くなる直前に財産を贈与しても課税逃れできないようにしていたのです。
2024年度税制改正での変更
- 持ち戻し期間が 3年 → 7年 に延長。
- 2024年以降の贈与から適用。
- ただし2027年までは「経過措置」があり、3年超7年以内の贈与は持ち戻し対象額の6割にとどまります。
- 2027年以降は、7年以内の贈与が全額持ち戻し対象になります。
👉 ポイントは「暦年贈与をしたからといって、短期間では相続財産から除けなくなった」ということです。
未成年NISAと暦年贈与の組み合わせ
もし未成年にもNISA口座が開けるようになれば、暦年贈与との組み合わせで次のようなメリットが期待できます。
- 贈与資金を効率的に運用できる
銀行預金に置くより、つみたてNISAで投資すれば運用益が非課税で増える。 - 形式的にも「子のためのお金」と明確にできる
子の名義のNISA口座を使うため、名義預金と指摘されにくい。 - 長期の贈与計画と相性が良い
7年ルールを踏まえると、「早めに始めて、長く積立を続ける」ことが最も効果的になります。
相続税対策としての意味
相続財産を減らすためには、7年以上前から計画的に贈与を始めることが重要になりました。
未成年NISAは少額からコツコツと資産移転を進める手段として、暦年贈与との相性が良いといえるでしょう。
まとめ──長期視点での「資産承継」
- 2024年から相続開始前7年以内の贈与が持ち戻し対象に。
- 暦年贈与と未成年NISAを組み合わせるなら、長期計画が必須。
- 早めに始めれば、相続対策+子どもの金融教育の両立が可能。
👉参考:2025年9月18日付 日本経済新聞「つみたてNISA『未成年に対象拡大を』日証協会長が要望」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
