未成年NISAと他制度の比較──ジュニアNISAの教訓と贈与制度との違い

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2026年度の税制改正で議論されている「未成年NISA」。もし実現すれば、過去に存在したジュニアNISAや現在の教育資金贈与制度、相続時精算課税制度との関係を整理する必要があります。制度を比較してみると、それぞれの狙いや使い勝手の違いが見えてきます。


ジュニアNISAの教訓

未成年向け制度といえば「ジュニアNISA」(2016年~2023年)が思い出されます。

  • 年間80万円まで投資可能
  • 運用益非課税
  • 原則18歳まで引き出し制限

しかし普及は限定的でした。その理由は主に2つ。

  1. 使い勝手の悪さ:18歳まで引き出せないため教育資金として柔軟に使えなかった。
  2. 制度の安定性不足:導入から数年で廃止が決まり、「どうせすぐ変わる」と敬遠された。

今回の「未成年NISA」は、この反省を踏まえ、現行NISAの枠組みの中で対象年齢を広げるだけのシンプルな設計が検討されています。つまり「長期で安心して使える制度」として信頼されやすい点が違いです。


教育資金一括贈与制度との違い

もう一つ比較されるのが教育資金贈与の非課税制度です。

  • 祖父母→孫へ最大1,500万円まで非課税で贈与可能(用途は教育関連費用に限定)
  • 結婚・子育て資金贈与制度も別枠あり

この制度は「資金用途が教育に限られる」点が特徴です。
一方で未成年NISAは、運用益が非課税である代わりに「用途制限なし」。
つまり教育資金だけでなく、将来の住宅資金や独立資金にも使える柔軟性があります。


相続時精算課税制度との比較

相続時精算課税制度は、

  • 2,500万円まで贈与時に非課税
  • ただし相続時に合算して精算課税

という仕組みで、大口資産を移すには便利ですが、節税効果は限定的です。

未成年NISAは年間の拠出枠があるため少額ずつしか移せませんが、暦年贈与の非課税枠(110万円)と組み合わせ、運用益も非課税という点で、長期の資産移転に向いています。


暦年贈与ルールの改正──「3年」から「7年」へ

ここで重要なのが、暦年贈与と相続の関係ルールが2024年改正で変わった点です。

  • これまで:相続開始前3年以内の贈与は持ち戻し対象
  • 改正後:2024年以降の贈与から、7年以内の贈与が持ち戻し対象に延長
  • 2027年までは経過措置あり(3年超7年以内の贈与は6割を加算)

👉 このため、未成年NISAを暦年贈与と組み合わせる場合も、「最低7年以上前からの長期計画」が前提になります。


どんな人に向いているか?

各制度の特徴を整理すると、利用対象が見えてきます。

  • ジュニアNISA(廃止済):教育費を長期で準備したい家庭。ただし使い勝手に難あり。
  • 教育資金贈与制度:祖父母がまとまった教育資金を早めに渡したい場合。
  • 相続時精算課税制度:不動産や大口資産を一度に移したい裕福層。
  • 未成年NISA(検討中):少額からコツコツ、贈与と金融教育を兼ねて進めたい家庭。

制度を横断的に使う視点

大事なのは「どれか一つを使えばよい」ではなく、目的に応じて制度を組み合わせる視点です。

  • 教育費 → 教育資金贈与制度+未成年NISA
  • 相続対策 → 暦年贈与(7年ルール対応)+未成年NISA
  • 大口資産 → 相続時精算課税制度

こうした組み合わせで、より柔軟に資産移転を進められます。


まとめ──ジュニアNISAの反省を踏まえた「長期視点」

未成年NISAは、ジュニアNISAの失敗を繰り返さず、

  • 制度の安定性
  • 用途の柔軟性
  • 金融教育との親和性

を兼ね備え、さらに「7年ルールを踏まえた長期贈与戦略」とも結びつけやすい制度になり得ます。
単なる非課税枠ではなく、家族の資産承継と子どもの金融教育を同時に進める仕組みとして注目すべきです。


👉参考:2025年9月18日付 日本経済新聞「つみたてNISA『未成年に対象拡大を』日証協会長が要望」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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