投資信託の基準価額は、投資判断の中心的な指標です。多くの投資家は、この数値をもとに購入や売却の判断を行っています。
しかし、この基準価額は常に「市場価格そのもの」を反映しているわけではありません。特に未上場株を含む投資信託においては、その評価の仕組みを理解しておくことが重要になります。
本稿では、投資信託の評価額がどのように算定されているのか、その信頼性と限界を整理します。
基準価額の基本構造
投資信託の基準価額は、以下のように算定されます。
・保有資産の時価評価額
・現金や債券などの資産
・そこから費用や負債を控除
これを総口数で割ることで、1口あたりの価格が決まります。
上場株の場合、この評価は比較的シンプルです。市場で取引されている価格をそのまま用いることができるためです。
しかし、すべての資産が同じように評価できるわけではありません。
上場株と未上場株の評価の違い
上場株は、市場価格が常に存在します。売買が成立した価格が、そのまま評価額になります。
一方、未上場株には市場価格がありません。そのため、評価は次のような方法で行われます。
・直近の資金調達価格
・類似企業との比較
・将来キャッシュフローの割引評価
これらはいずれも「推計」に基づく評価です。
つまり、未上場株の評価額は
・客観的な価格ではなく
・合理的と考えられる仮定の集合
であるという特徴があります。
評価の安定性と遅行性
未上場株の評価には、もう一つ重要な特徴があります。それは「価格が動きにくい」という点です。
上場株は日々価格が変動しますが、未上場株は評価の見直しが定期的にしか行われません。
その結果、次のような現象が起こります。
・実態よりも価格変動が小さく見える
・市場環境の変化が遅れて反映される
・急激な価格変動が突然表面化する
これは、価格の安定ではなく「遅れている」可能性があります。
評価の主観性とバイアス
未上場株の評価は、一定のルールに基づいて行われますが、完全に客観的とはいえません。
評価には次のような要素が含まれます。
・成長率の見積もり
・リスクの織り込み方
・割引率の設定
これらは、一定の範囲で判断の余地があります。
したがって、評価額には
・楽観的なバイアス
・保守的なバイアス
が入り得ます。
この点は、投資家が意識しておくべき重要なポイントです。
流動性と価格の関係
価格の信頼性は、流動性とも密接に関係しています。
上場株は、
・多数の参加者による取引
・価格発見機能
が存在します。
一方、未上場株は
・取引機会が限定的
・買い手が見つからない可能性
があります。
そのため、評価額と実際に売却できる価格が一致しない可能性があります。
評価額は「売れる価格」ではなく、「理論上の価格」である場合があるのです。
投資信託全体としての影響
未上場株の評価の特徴は、投資信託全体の見え方にも影響します。
例えば、
・価格変動が小さく見えることで安定的に見える
・実際のリスクが過小評価される可能性がある
一方で、
・長期投資においては短期的な価格変動に左右されにくい
という側面もあります。
つまり、評価の特性は
「リスクの隠れ方」を変える
という理解が必要です。
投資家が持つべき視点
投資信託の評価額をどのように見るべきかについては、いくつかの視点が重要です。
・評価額は絶対的な価格ではない
・特に未上場株は推計値である
・価格の安定は必ずしも低リスクを意味しない
これらを踏まえることで、評価額をより適切に解釈することができます。
結論
投資信託の基準価額は、投資判断において重要な指標です。
しかし、その内訳を見ると、すべてが同じ信頼性を持つわけではありません。
特に未上場株を含む場合、評価額は
・推計に基づく価格
・流動性を伴わない価格
という性質を持ちます。
重要なのは、評価額をそのまま信じることではなく、その背後にある評価ロジックを理解することです。
今後、未上場株を含む投資信託が広がる中で、「価格の意味」をどう捉えるかが、投資判断の質を大きく左右すると考えられます。
参考
日本経済新聞(2026年4月7日 朝刊)
公募投信ルール、未上場株15%の一時超過を容認