所得税基礎講座 必要経費を考える(第7回)不動産所得の必要経費 ― 「不動産の貸付け」という所得の性格

税理士
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所得税では、所得をその性質に応じて分類し、それぞれ異なる方法で計算します。その中で、不動産所得は「不動産の貸付けによって生じる所得」と定義されています。この定義は一見単純に見えますが、必要経費の範囲を考えるうえで重要な意味を持っています。

事業所得の場合には、営業活動に関連するさまざまな支出が必要経費として認められますが、不動産所得では必ずしも同じようには扱われません。不動産所得はあくまで「不動産の貸付け」によって生じる所得であるため、必要経費として認められる支出も、その貸付けに直接関連するものに限られる傾向があります。

今回は、不動産所得の性格と必要経費の範囲の関係について整理します。


不動産所得の基本的な定義

所得税法では、不動産所得を次のように定義しています。

不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶または航空機の貸付けによって生ずる所得をいいます。

この規定から分かるように、不動産所得の本質は「資産の貸付け」によって生じる所得であり、商品の販売や役務提供によって生じる所得とは性格が異なります。

この違いは、必要経費の範囲にも影響を与えます。


事業所得との違い

事業所得は、継続的に行われる事業活動によって生じる所得です。事業では営業活動や販売活動などさまざまな活動が行われるため、それに伴う多様な支出が必要経費として認められます。

一方で、不動産所得は資産の貸付けによって生じる所得であるため、必要経費として認められる支出も、不動産の貸付けに直接関係するものが中心になります。

例えば、次のような支出は不動産所得の必要経費として認められることが一般的です。

・建物の修繕費
・固定資産税
・管理委託費
・損害保険料
・減価償却費

これらはすべて、不動産の貸付けという活動と直接関係している支出です。


必要経費の範囲が限定される理由

不動産所得では、必要経費の範囲が比較的限定される傾向があります。その理由は、不動産所得の活動内容が比較的単純であるためです。

例えば、商品を販売する事業では広告宣伝費や接待交際費などの支出が必要になることがあります。しかし、不動産の貸付けではこのような支出が通常必要になるとは限りません。

このような事情から、不動産所得の帳簿様式である青色決算書や収支内訳書では、事業所得の帳簿に比べて勘定科目の種類が少なくなっています。

例えば、旅費交通費や接待交際費などの項目は、不動産所得用の帳簿にはあらかじめ設けられていません。これは、不動産所得ではそのような支出が通常は発生しないことを前提としているためと考えられます。


不動産所得特有の必要経費

不動産所得では、貸付けに関連する特有の費用が必要経費となります。

代表的なものとして、次のような費用があります。

・固定資産税や都市計画税
・管理会社への管理委託費
・賃貸物件の修繕費
・建物の減価償却費
・賃貸物件に係る損害保険料

これらの費用は、不動産を貸し付けることによって収入を得るために必要な支出であるため、必要経費として認められます。


必要経費の判断で注意すべき点

不動産所得の必要経費を考える際には、その支出が不動産の貸付けと直接関係しているかどうかを検討することが重要です。

例えば、賃貸物件の管理や保守のために現地を訪問する交通費などは必要経費として認められる可能性があります。しかし、将来の投資を検討するための視察費用などは、不動産の貸付けによる所得と直接関係するとはいえないため、必要経費として認められない場合があります。

このように、不動産所得では支出と貸付けとの関連性が重要な判断基準となります。


結論

不動産所得は資産の貸付けによって生じる所得であり、その性格は事業所得とは異なります。このため、不動産所得の必要経費として認められる支出は、不動産の貸付けと直接関連するものが中心になります。

必要経費を判断する際には、その支出が不動産の貸付けとどのように関係しているのかを検討することが重要です。この視点を理解することは、不動産所得の所得計算を適正に行ううえで基本となります。

次回は、不動産所得において問題となることの多い取得前費用の取扱いを取り上げ、不動産取得に関連する支出が必要経費になるのかどうかを整理します。


参考

税のしるべ 所得税基礎講座 必要経費を考える
所得税法
所得税法施行令
所得税基本通達

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