所得税基礎講座 必要経費を考える(第3回)必要経費と取得費 ― 資産取得との境界

税理士
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所得税の必要経費を考える際、実務上しばしば問題となるのが「取得費」との区分です。事業や不動産の貸付けに関連する支出であっても、その支出が資産の取得に関係する場合には、その年の必要経費として処理することはできません。

例えば、建物や機械設備などの資産を購入した場合、その支出は必要経費ではなく資産の取得価額として処理されます。そして、その取得価額は耐用年数に応じて減価償却によって費用化されることになります。

今回は、必要経費と取得費の違いを整理しながら、資産取得に関連する支出の考え方を確認します。


必要経費と取得費の違い

所得税では、収入を得るための支出であっても、その支出の性質によって処理方法が異なります。支出がその年の業務活動に対応する費用であれば必要経費となりますが、資産の取得や価値の増加に関係する支出であれば取得価額として処理されます。

必要経費は、その年の所得計算において直接費用として控除されます。一方、資産の取得価額は、その年に全額を費用化するのではなく、減価償却などの方法により複数年にわたって費用化されます。

この区分は、所得計算の期間対応の考え方に基づくものです。資産は長期間にわたって使用されるため、その取得費用も使用期間に応じて配分する必要があると考えられているためです。


資産取得に関連する支出

資産を取得する際には、購入代金だけでなく、さまざまな付随費用が発生します。これらの費用は一般に「取得付随費用」と呼ばれ、資産の取得価額に算入されます。

例えば、次のような費用が該当します。

・運送費
・荷造運賃
・据付費
・試運転費
・購入手数料

これらの費用は資産を使用可能な状態にするために必要な支出であり、資産の取得と一体のものと考えられます。そのため、これらの支出は必要経費ではなく取得価額として処理されます。


棚卸資産の場合の取扱い

商品や製品などの棚卸資産を仕入れる場合にも、取得価額に算入される費用があります。

例えば、商品を仕入れて販売する場合の運送費や荷造運賃は、その商品を仕入れるために直接必要な費用であるため、棚卸資産の取得価額に含めることになります。

したがって、これらの費用は仕入れの段階では必要経費として処理されず、商品が販売された時点で売上原価として費用化されることになります。


減価償却資産の取得価額

建物や機械装置などの減価償却資産についても、取得価額には購入代金だけでなく取得付随費用が含まれます。

例えば、事業用の機械を購入する際に支払った運送費や据付費、調整費などは、その機械の取得価額に算入されます。そして、その取得価額を基礎として減価償却費が計算されます。

このように、資産取得に関連する支出は必要経費として処理されるのではなく、取得価額を構成する要素として扱われます。


必要経費との境界が問題となるケース

実務では、必要経費と取得費の境界が問題となることがあります。例えば、次のようなケースです。

・設備の修理費と設備の改良費
・機械の運送費
・物件取得のための調査費用

これらの支出は、その内容によって必要経費として処理される場合と取得価額として処理される場合があります。

例えば、単なる修理であれば修繕費として必要経費になりますが、資産の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする支出であれば資本的支出として取得価額に算入されることになります。


結論

所得税における必要経費の判断では、支出が資産の取得に関係するかどうかが重要なポイントになります。資産の取得に関連する支出は、その年の必要経費として処理するのではなく、取得価額として資産に計上する必要があります。

この区分は、所得計算の適正性を保つうえで重要な考え方です。必要経費と取得費の違いを理解することは、所得税の実務を考えるうえで基本となります。

次回は、必要経費と減価償却の関係を取り上げ、減価償却費の考え方を整理します。


参考

税のしるべ 所得税基礎講座 必要経費を考える
所得税法
所得税法施行令
所得税基本通達

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