家事関連費はどこまで経費になるのか ― 区分できるかどうかが分かれ目

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

個人事業を営んでいると、必ず一度は悩むのが「これは必要経費になるのか」という問題です。

とくに難しいのが、自宅兼事務所の家賃や光熱費、通信費など、生活費と事業費が混在する費用です。いわゆる家事関連費の扱いは、税務調査でも頻繁に論点となります。

今回は、家事関連費の基本的な考え方と、実務上の留意点を整理します。


家事費と家事関連費の違い

まず整理しておきたいのは、家事費と家事関連費の違いです。

明らかに生活費といえるものは、当然ながら必要経費にはなりません。
例えば、子どもの給食費や私的な洋服代などは、家事費に該当し、必要経費として争点になることは通常ありません。

問題になるのは、事業と生活の両方に関連する費用です。

これが家事関連費です。

代表例としては次のようなものがあります。

  • 自宅兼事務所の家賃
  • 電気代・水道代
  • インターネット通信費
  • 自家用車のガソリン代

これらは、事業に使っている部分がある一方で、生活にも使っています。そのため、全額経費とはならず、一定の按分が必要になります。


法令上の考え方

所得税法45条1項および所得税法施行令96条は、家事関連費について次のように定めています。

業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合に限り、その部分に相当する金額を必要経費に算入できる。

つまり、ポイントは「明らかに区分できるかどうか」です。

区分できないものは、原則として必要経費にはなりません。


全額経費はなぜ否認されるのか

例えば、1階が店舗、2階が住居という店舗兼住宅の場合は、面積割合などにより合理的な按分が可能です。

しかし、パソコン作業中心の業種で、自宅のどこでも仕事ができるという状況ではどうでしょうか。

特定の部屋が明確に事業専用とはいえない場合、その建物全体を事業用資産とすることは認められません。

裁判例でも、建物のうち家庭生活が主である部分まで事業用とすることは認められないとされています(大分地裁昭和60年4月24日判決)。

つまり、

  • 事業で使用している事実があること
  • その使用部分が明確に区分できること

この両方が必要です。


自宅作業場の按分方法をどう考えるか

では、実務ではどうすればよいのでしょうか。

重要なのは「客観的に説明できる按分方法」を持つことです。

例えば次のような方法があります。

面積按分

事業専用スペースの面積 ÷ 建物全体の面積

使用時間按分

事業使用時間 ÷ 総使用時間

複合按分

面積割合 × 使用時間割合

いずれの場合も、

  • 事業専用スペースを明確に区切る
  • 図面や写真で説明できる状態にする
  • 計算方法を継続適用する

といった点が重要になります。

毎年方法が変わるようでは合理性が疑われます。


実務で気をつけたい3つのケース

家事関連費で問題になりやすいのは、次の3類型です。

  1. 本来は按分すべきなのに全額を経費にしている
  2. 按分方法が合理的でない
  3. 家事費を無理に家事関連費として処理している

いずれも「区分できているか」「合理性があるか」が判断基準になります。


テレワーク時代こそ整理が必要

近年は自宅で仕事をする人が増えています。

しかし、自宅で仕事をしているという事実だけでは、全額経費にはなりません。

むしろ、仕事スペースが曖昧になりやすい分、より慎重な整理が必要です。

自宅作業場を設けるのであれば、

  • 専用スペースを明確にする
  • 按分基準を文書化する
  • 証拠資料を保管する

この3点を整えておくことが、後日のリスク管理につながります。


結論

家事関連費のポイントは一つです。

業務の遂行上必要な部分を、明らかに区分できるかどうか。

区分できなければ経費にならず、区分できればその部分のみが経費になります。

曖昧なまま処理するのではなく、説明可能な按分方法を設計することが重要です。

自宅兼事務所で事業を行っている方は、今一度、自分の按分方法を見直してみることをお勧めします。


参考

税のしるべ
連載「所得税基礎講座 必要経費を考える」第18回
2026年2月9日号

所得税法45条1項
所得税法施行令96条

大分地方裁判所判決 昭和60年4月24日

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました