企業の会計不祥事が発覚すると、多くの場合、次のような事実が明らかになります。
不正は突然始まったわけではなく、長期間にわたって継続していた。
しかも、社内には不正の兆候を示す情報が存在していた。
過去の事例を振り返ると
- カネボウの粉飾決算
- オリンパスの損失隠し
- 東芝の利益水増し
など、いずれも長期間にわたって不正が続いていました。
なぜ企業の会計不正は長期化するのでしょうか。
本稿では、日本企業の不祥事に共通して見られる構造について整理します。
会計不正は突然始まるわけではない
多くの会計不正は、最初から大規模な不正として始まるわけではありません。
多くの場合、不正の始まりは小さな会計処理の調整です。
例えば
- 業績目標を達成するための軽微な数字調整
- 将来の利益で補填する前提の処理
- 一時的な費用の先送り
といった処理が行われることがあります。
しかし一度こうした処理が行われると、その後の決算で数字を合わせる必要が生じます。
その結果、不正が次の不正を呼び、不正が拡大していく構造が生まれます。
このような過程を経て、会計不正は徐々に長期化していきます。
業績プレッシャーの存在
会計不正の背景としてしばしば指摘されるのが、強い業績プレッシャーです。
企業では
- 売上目標
- 利益目標
- 株式市場の期待
など、さまざまな目標が設定されています。
これらの目標は企業経営にとって重要ですが、過度なプレッシャーとなる場合もあります。
特に
- 達成が困難な目標が設定されている
- 数字未達が強く批判される
- 業績評価が短期利益に偏る
といった環境では、不正の誘因が強くなります。
過去の企業不祥事でも、トップによる強い業績要求が背景にあったと指摘されることが少なくありません。
組織文化の問題
会計不正が長期化する要因として、組織文化の問題も重要です。
多くの第三者委員会報告書では
- 上司に異論を言いにくい
- 不都合な情報が上に伝わらない
- 組織内で問題が共有されない
といった組織文化が指摘されています。
このような環境では、不正に気付いた社員がいても問題を指摘することが難しくなります。
結果として、不正が組織内部で修正される機会が失われ、不正が長期間続くことになります。
内部統制の形骸化
企業では、不正を防止するための仕組みとして内部統制制度が整備されています。
内部統制には
- 職務分掌
- 承認手続
- 内部監査
などの仕組みが含まれます。
しかし、制度が存在していても実際には機能していない場合があります。
例えば
- 上司の指示でルールが無視される
- 形式的なチェックだけが行われる
- 内部監査が十分に機能していない
といった状況が生じると、内部統制は形骸化してしまいます。
このような状況では、不正を発見する仕組みが十分に機能しません。
監査との関係
会計不正が長期化する場合、外部監査の役割も議論されます。
監査人は企業の財務諸表を検証する立場にありますが、監査には一定の限界があります。
監査は
- 限られた期間
- 限られた監査手続
- 企業から提供された情報
を基に行われます。
そのため、不正が巧妙に隠されている場合、監査人が発見することが難しい場合もあります。
このため近年の監査制度では
- 職業的懐疑心の強化
- 監査人の独立性の確保
- 監査法人の品質管理
といった制度が強化されています。
不正が発覚するきっかけ
長期化した会計不正が発覚するきっかけはさまざまです。
代表的なものとして
- 内部通報
- 内部監査
- 監査人の指摘
- メディア報道
などが挙げられます。
近年では内部通報制度の重要性が強調されています。
企業内部の不正は外部から発見することが難しい場合が多く、内部からの情報提供が重要な役割を果たします。
そのため企業では、内部通報制度の整備が進められています。
結論
会計不正が長期化する背景には、複数の要因が存在します。
不正は小さな会計処理の調整から始まり、業績プレッシャーや組織文化の影響を受けながら拡大していくことがあります。
さらに
- 内部統制の形骸化
- 組織内の情報共有の不足
- 不正を指摘しにくい文化
といった要因が重なることで、不正が長期間継続する構造が生まれます。
企業不祥事を防ぐためには、制度の整備だけでなく、組織文化やガバナンスの改善も重要になります。
会計不正は単なる個人の問題ではなく、組織全体の問題として理解する必要があるのです。
参考
日本弁護士連合会
企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン
日本経済新聞
企業不祥事関連記事(各年報道)
