確定申告のデジタル化が急速に進んでいます。
ID・パスワード方式の新規発行停止や、スマホ申告の推進により、マイナンバーカード方式が事実上の標準となりつつあります。
しかし、利便性の向上と同時に、新しいタイプの実務トラブルも増えています。
本稿では、現場で起きやすいマイナカード申告の実務トラブル事例を整理します。
1.電子証明書の有効期限切れ
最も多いトラブルが、電子証明書の有効期限切れです。
マイナンバーカード本体の有効期限とは別に、電子証明書には有効期限があります。
特に多いのは、
・カード自体は有効
・しかし電子証明書が失効
というケースです。
申告直前に気づくことが多く、市区町村窓口での更新が必要になります。
確定申告期は窓口が混雑するため、更新待ちで申告が遅れるリスクがあります。
2.暗証番号ロック問題
電子証明書には暗証番号があります。
・署名用電子証明書(英数字6~16桁)
・利用者証明用電子証明書(数字4桁)
これを複数回誤入力するとロックがかかります。
高齢の納税者に多いのは、
「4桁と英数字を混同」
「家族が設定した番号を覚えていない」
というケースです。
ロック解除は原則として市区町村窓口での手続きが必要になります。
確定申告当日に発覚すると、実務が完全に止まります。
3.カード読み取り機器の不具合
スマホ申告では、
・NFC機能非対応端末
・OS未更新
・アプリ未対応バージョン
などの技術的問題が発生します。
また、PC申告の場合はICカードリーダライタのドライバ不具合もあります。
特に多いのは、
「昨年は使えたのに今年は読み取れない」
というケースです。
端末更新により互換性が変わることが原因となることがあります。
4.マイナポータル連携の誤解
医療費情報や源泉徴収票のデータ連携は便利ですが、
・連携設定が未完了
・反映が間に合っていない
・すべての医療費が反映されると誤解
といったトラブルが起きます。
特に医療費は、保険外診療や未連携医療機関分が自動反映されないため、二重計上や未計上が発生します。
「自動だから確認不要」と思い込むことがリスクです。
5.代理送信の実務誤解
税理士が代理送信する場合、
・納税者本人の電子署名が必要なケース
・委任関係の確認不足
・カード預かり管理のリスク
といった問題があります。
カードを事務所で預かる場合は、情報管理・内部統制上のリスクが生じます。
デジタル化は、逆に管理責任を明確化させる側面があります。
6.期限内送信できなかった事例
通信エラーや認証エラーで送信完了画面が表示されず、
・実は未送信だった
・控えデータだけ保存して安心していた
という事例もあります。
受付結果(受信通知)の確認を怠ると、期限後申告扱いになる可能性があります。
紙申告とは異なり、「提出したつもり」が発生しやすいのが電子申告の特徴です。
トラブルの本質は何か
これらのトラブルは、技術的問題に見えますが、本質は
・事前確認不足
・デジタル手続きの理解不足
・チェック体制の未整備
にあります。
税務行政のDXは進みますが、実務のリスク管理も同時に高度化します。
実務上の予防策
マイナカード申告において最低限確認すべき事項は、
1.電子証明書の有効期限
2.暗証番号の事前確認
3.端末環境テスト
4.マイナポータル連携状況
5.受信通知の保存
です。
確定申告期直前ではなく、年内や1月中に確認する体制が望まれます。
結論
マイナカード申告は、今後の標準手段となります。
しかし、利便性と同時に「新しいミス」が生まれています。
紙からデジタルへ移行する過程では、制度理解だけでなく、運用管理能力が問われます。
デジタル化はリスクを消すのではなく、リスクの形を変えるだけです。
その変化を正しく理解し、先回りして備えることが、これからの実務の安定につながります。
参考
・税のしるべ 2026年2月16日号
・国税庁 e-Tax関連公表資料
