ファンド市場の停滞と制度改革の方向性―REIT・インフラ・ベンチャーの再設計

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株式市場の活況が続く一方で、もう一つの資本市場であるファンド市場の存在感は相対的に薄れています。不動産投資信託(REIT)、インフラファンド、ベンチャーファンドはいずれも制度的な枠組みの中で運用されていますが、その制度自体が成長の制約となっている側面も指摘されています。

本稿では、ファンド市場が抱える構造的課題を整理し、制度改革の方向性について考察します。


ファンド市場の現状と構造的な位置づけ

東京証券取引所におけるファンド市場は、株式市場とは異なる役割を担っています。個別企業の成長に投資する株式に対し、ファンドは特定の資産や事業から得られるキャッシュフローに投資する仕組みです。

本来であれば、分散投資の観点や安定収益志向の投資家にとって重要な選択肢となるはずですが、現状では銘柄数や取引量ともに限定的であり、市場としての厚みが不足しています。

その背景には、単なる需要不足ではなく、制度設計そのものが投資対象や収益機会を制約しているという問題があります。


REIT市場の課題―収益構造の硬直性

REITは不動産から得られる賃料収入を主な収益源としていますが、この構造が成長の制約となっています。

本来、不動産は単なる賃貸収入にとどまらず、サービス提供を通じた付加価値の創出が可能な資産です。例えば、貸会議室や設備利用、付帯サービスなど、利用形態の多様化により収益源を拡張する余地があります。

しかし、現行制度ではこうした収益の取り込みが制限されており、不動産の潜在的な価値を十分に引き出せていません。その結果、投資口価格が資産価値に対して割安となり、新規資金調達が停滞する構造が生まれています。


インフラファンドの停滞―投資対象の偏り

インフラファンドは本来、社会基盤への投資を通じて安定収益を提供する役割を担いますが、日本では太陽光発電に偏重した構成となっています。

制度上はより多様な資産への投資が可能であるにもかかわらず、実際の市場では対象が限定されているのが実情です。

本来想定される投資対象としては、以下のような領域が考えられます。

・洋上風力発電
・蓄電池設備
・通信インフラ(基地局など)
・公共施設の運営権(コンセッション)

これらは長期安定収益を生みやすい一方で、制度面や税制面の不確実性が投資の障壁となっています。結果として、上場市場としての魅力が十分に発揮されていません。


ベンチャーファンドの再評価―投資機会の拡張

近年、制度改革によりベンチャーファンドの位置づけは変化しつつあります。

未上場企業への投資機会を一般投資家に提供する仕組みは、これまで一部の機関投資家や富裕層に限られていた領域を開放するものです。さらに、上場後も継続保有できるクロスオーバー投資が認められることで、成長企業への長期投資が可能となります。

これは、投資対象の時間軸を拡張するという意味で重要な変化です。従来の「上場=出口」という構造から、「成長の継続に伴走する投資」へと転換する可能性を持っています。


制度改革の本質―投資対象の拡張と柔軟性

ファンド市場の停滞は、個別の市場の問題ではなく、制度全体の柔軟性に起因しています。

重要なのは、以下の2点です。

第一に、収益源の多様化を認めることです。REITにおけるサービス収益の取り込みのように、資産の価値を最大化する仕組みが求められます。

第二に、投資対象の拡張です。インフラや未上場企業など、従来の枠を超えた資産へのアクセスを制度として支える必要があります。

これにより、投資家にとっての選択肢が広がり、結果として市場全体の厚みが増すことになります。


資産運用立国に向けた意味合い

ファンド市場の活性化は、単なる金融市場の問題にとどまりません。

一般投資家がアクセスできる投資対象が拡大することは、資産形成の選択肢が広がることを意味します。特に、安定収益型資産や成長初期企業への投資機会が増えることは、ポートフォリオの質的向上につながります。

また、インフラやベンチャー分野への資金供給が円滑になることで、実体経済への波及効果も期待されます。


結論

ファンド市場の停滞は需要の問題ではなく、制度設計の問題です。REITの収益制約、インフラファンドの対象偏重、ベンチャーファンドの制度的制限といった構造的課題が、市場の成長を抑制しています。

制度の柔軟化により投資対象と収益機会を拡張することができれば、ファンド市場は株式市場を補完する重要な役割を果たす可能性があります。

資産運用立国の実現に向けては、こうした市場インフラの再設計が不可欠です。


参考

・日本経済新聞(2026年4月7日朝刊)
ファンド市場、制度改善が必要(私見卓見) 森・浜田松本法律事務所 外国法共同事業パートナー 尾本太郎

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