インフラファンドはなぜ広がらないのか―制度と市場構造の壁

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インフラファンドは、安定的なキャッシュフローを生む社会基盤に投資できる仕組みとして期待されてきました。しかし、日本では市場の拡大が進まず、銘柄数も限定的な状態が続いています。

本来、長期安定収益を志向する投資家にとって魅力的な投資対象であるにもかかわらず、なぜインフラファンドは広がらないのでしょうか。本稿では、その構造的要因を整理します。


制度上は可能でも実務上は限定的な投資対象

制度上、インフラファンドの投資対象は幅広く認められています。

発電設備、通信インフラ、交通インフラ、公共施設の運営権など、本来は多様な資産への投資が可能です。しかし、日本の上場インフラファンドの実態は、太陽光発電に大きく偏っています。

これは、制度が存在していても、実務として成立する投資対象が限られていることを示しています。


キャッシュフローの不確実性とリスク評価

インフラ資産は安定収益が期待される一方で、個別のリスク要因を多く抱えています。

例えば、発電事業であれば天候リスクや制度変更リスク、通信インフラであれば技術革新による陳腐化リスクなどが存在します。

これらのリスクは長期にわたって顕在化する可能性があり、投資家が適切に評価することが難しい側面があります。その結果、リスクプレミアムが高く見積もられ、投資判断が慎重になる傾向があります。


制度変更リスクの大きさ

インフラ分野は、政策や規制の影響を強く受けます。

特に再生可能エネルギー分野では、固定価格買取制度の見直しなどにより収益前提が変動するケースが見られます。こうした制度変更は、投資時点では予測しきれない不確実性として織り込まれます。

長期投資を前提とするインフラファンドにとって、この制度リスクは根本的な課題となります。


資産取得の難しさと競争環境

優良なインフラ資産は、必ずしも上場ファンド向けに供給されるわけではありません。

多くの場合、インフラ資産は大手企業やインフラ事業者、あるいは非上場のファンドが先行して取得します。結果として、上場インフラファンドが取得できる案件は限られ、成長機会が制約されます。

また、資産取得時の価格競争も激しく、利回りの低下を招く要因となっています。


税制・会計・法制度の複雑性

インフラファンドの組成・運用には、複数の制度が関係します。

税制上の取扱い、減価償却の扱い、運営権契約の法的枠組みなど、多層的な制度理解が必要となります。この複雑性は、投資家にとっての理解コストを高め、市場参加の障壁となります。

また、組成側にとってもコスト増加要因となり、結果として市場の拡大を抑制します。


流動性の低さと市場規模の問題

インフラファンドは銘柄数が少なく、市場規模も限定的です。

そのため、売買の流動性が低く、価格形成が不安定になりやすいという問題があります。流動性の低さは、機関投資家の参入を妨げる要因にもなります。

結果として、投資家層が広がらず、市場がさらに縮小するという循環が生じます。


公共性と収益性のバランス

インフラは本質的に公共性の高い資産です。

そのため、料金規制やサービス維持義務など、収益最大化とは異なる制約が課される場合があります。この公共性と収益性のバランスが、投資対象としての評価を難しくしています。

投資家にとっては、安定性の裏側にある制約として認識され、期待利回りの低下要因となります。


制度改革の方向性

インフラファンドの拡大には、制度面での対応が不可欠です。

第一に、投資対象の多様化を実務的に可能にするための制度整備が求められます。単に認めるだけでなく、実際に組成できる環境の整備が必要です。

第二に、制度変更リスクを低減するための長期的な政策の安定性が重要です。投資家が将来の収益見通しを合理的に判断できる環境が不可欠です。

第三に、税制や会計制度の簡素化により、投資家・運用者双方の負担を軽減することが求められます。


結論

インフラファンドが広がらない背景には、単一の要因ではなく、制度・市場・政策が複雑に絡み合った構造的な問題があります。

投資対象の限定、制度変更リスク、流動性の低さといった要因が相互に作用し、市場の拡大を阻んでいます。

これらの課題に対して制度的な対応が進めば、インフラファンドは資産運用の重要な柱となる可能性を持っています。


参考

・日本経済新聞(2026年4月7日朝刊)
ファンド市場、制度改善が必要(私見卓見) 森・浜田松本法律事務所 外国法共同事業パートナー 尾本太郎

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