インドはAI計算基地になれるか――10兆円投資が示す世界の構造変化

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世界のAI競争は、アルゴリズムの優劣だけで決まる時代を終えつつあります。
いま主戦場となっているのは「計算資源」です。

2026年に入り、インドがAI向けデータセンターの集積地として急浮上しています。米国テック大手による投資額は合計で約10兆円規模に達し、同国のデータセンター市場は2027年にも日本を上回る見通しとされています。

本稿では、インドが「AI第三極」を目指す構図と、その意味を整理します。


1.なぜいまインドなのか

口火を切ったのは
Google です。

同社は5年間で150億ドルを投じ、東部ビシャカパトナムに1ギガワット級の大規模AIデータセンターを建設する計画を公表しました。米国外で最大級のAIハブと位置付けています。

続いて
Microsoft が175億ドル規模、
Amazon も350億ドル超の投資を表明しています。

なぜこれほど集中するのでしょうか。

背景は大きく三つあります。

  • AI需要の爆発的拡大
  • データセンター建設コストの優位性
  • 豊富な理工系人材

インドは年間約250万人の理工系卒業生を輩出します。加えて建設コストは日本の約半分、中国よりも2~3割安いとされ、電力コスト面でも優位があります。

AI時代において「安価で大量の電力」と「運用人材」は、半導体と並ぶ基礎インフラです。インドはこの両輪を備えています。


2.市場規模は日本を逆転へ

インドのデータセンター市場は、2026年に前年比16%増の117億ドル、2027年には日本を上回ると予測されています。

単なる一時的な成長ではなく、今後5年間で年平均16%の拡大が見込まれています。

日本は成熟市場であり、安定性はあるものの爆発的な伸びは期待しにくい。一方、インドは人口増加・デジタル化・外資誘致が同時進行しています。

「市場規模の逆転」は、象徴的な意味を持ちます。
アジアにおけるAIインフラの重心が東アジアから南アジアへ移動しつつあるということです。


3.インド政府の戦略

インド政府は「AIミッション」を掲げ、産業政策としてAIを推進しています。

2026年度予算案では、国外向けクラウドサービスを提供する外資企業に対し、2047年まで法人税を免除する措置を盛り込みました。

これは単なる投資誘致ではありません。

  • 外資によるインフラ整備
  • 技術基盤の国内蓄積
  • 受託開発から研究開発への高度化

という三段階の産業戦略です。

また、国際会議「AIインパクトサミット」がインドで開催されたことも象徴的です。グローバルサウスの代表として、AI分野で存在感を高めようとしています。


4.AI第三極とは何か

現在のAI競争は、事実上
米国と中国の二極構造です。

インドはその間に立つ「第三極」を志向しています。

  • 米国の技術力
  • 中国の国家主導型投資

いずれにも全面依存せず、自国の人材とコスト優位性を武器に独自のポジションを築くという構図です。

これは地政学的にも重要です。
AIは軍事・経済・金融すべてに波及する基盤技術であり、インフラの所在は国家安全保障に直結します。


5.日本にとっての示唆

日本はどう向き合うべきでしょうか。

単純な規模競争では分が悪いのが現実です。

しかし、

  • 省電力型AI
  • 産業特化型AI
  • 半導体材料や装置分野

など、強みのある領域に集中する戦略は十分考えられます。

また、日本企業にとっては
インドを「競争相手」とみるだけでなく、
「計算インフラの活用拠点」として位置づける選択肢も出てきます。

AIはもはや国内完結型の産業ではありません。


結論

インドへの10兆円投資は、一過性のニュースではありません。
それは「AIは国家インフラである」という時代の宣言です。

電力、土地、人材、税制。
それらを総合設計できる国が、AI時代の計算基地になります。

インドは明確な国家戦略のもとで、その座を狙っています。
世界のAI地図は、今まさに塗り替えられつつあります。


参考

日本経済新聞「インド、AI計算基地に グーグルやアマゾンが10兆円投資」2026年2月17日 朝刊
Mordor Intelligence 調査資料(データセンター市場予測)
CBRE Group データセンター建設コスト分析資料

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