2025年9月17日、日本証券業協会(日証協)が2026年度の税制改正要望を発表しました。注目されるのは「つみたてNISAの未成年利用解禁」です。現在、NISAは18歳以上が対象ですが、これを未成年まで広げてほしいと要望しています。背景や狙い、そして暦年贈与との関係を整理してみましょう。
NISA制度の現状
NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得られる利益が非課税になる仕組みです。2024年から制度が恒久化され、
- 成長投資枠(上場株式などに投資可能)
- つみたて投資枠(投資信託をコツコツ積立)
の2本立てで運用されています。特に「つみたて枠」は、投資初心者や長期投資を志向する人に向けた制度です。
しかし、2025年春以降、NISA口座の新規開設数が前年の半分に減速しています(日証協調べ)。利用者拡大に歯止めをかけるために、未成年への拡大が打ち出されたのです。
未成年もつみたてNISA? その狙い
日証協・日比野会長は「重点は若年層への資産シフト」とコメント。
背景には次の2点があります。
- 若い世代の早期からの投資習慣づくり
少額から長期で投資を始めれば、資産形成の裾野が広がります。 - 少子高齢化の中で個人株主の安定化
政策保有株が減るなかで、個人が安定株主として市場を支えることが期待されています。
金融庁も同様の要望を掲げており、政府全体として「未成年NISA解禁」に前向きな姿勢が見られます。
暦年贈与との関係は?
ここで気になるのが「暦年贈与」です。
親や祖父母が子や孫の口座に資金を移して投資を始めれば、非課税での資産移転の手段として注目される可能性があります。
- 暦年贈与は年間110万円まで非課税。
- この資金を未成年NISAのつみたてに回せば、
贈与時は非課税+運用益も非課税
という「ダブル非課税」のメリットが生まれます。
ただし注意点もあります。
- 贈与したお金は「子の名義」であり、親が自由に引き出すことはできません。
- 税務署から「名義預金」と指摘されないよう、契約者・入金者・出金者が子本人である形を整える必要があります。
そのため、教育資金や将来の独立資金として長期保有を前提にするのが望ましいでしょう。
相続税対策としての意味
相続が近づくと、相続財産を減らすために株を売却してしまうケースもあります。日証協は「個人株主の安定化」を狙い、相続時の税制優遇も要望しました。
つまり、未成年NISAの拡大は「教育・贈与」だけでなく「相続」も視野にあるのです。
これからどうなる?
制度改正はまだ決定ではなく、今後の税制改正大綱で議論されます。ただ、政府・金融庁・業界が足並みをそろえている点から、実現可能性は高そうです。
まとめ──我々にとってのポイント
- 未成年でも「長期・積立・分散」の投資環境が整う可能性がある。
- 贈与と組み合わせれば、親から子への資産移転に有効。
- ただし、形式的には子の名義での運用が必須。
- 相続税対策とも絡むため、将来の制度設計次第で活用法が広がる。
未成年NISAが導入されれば、家庭の中で「お金の教育」と「資産形成」を同時に進められるチャンスとなりそうです。
👉この記事は2025年9月18日付 日本経済新聞の記事を参考にしています。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

