「NISAを相続したらどうなる?」― 知らないと損する“非課税の終わり方”

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2024年1月に新しいNISAが始まってから、もうすぐ2年。
30代・40代の資産形成層だけでなく、実は70歳以上の高齢層でもNISAの利用が急増しています。
「老後資金を運用しながら少しでも長持ちさせたい」――そんなニーズに、非課税・期限なしの新NISAがマッチしているからです。

けれども、忘れてはいけないテーマがあります。
それは、「NISAを持つ親が亡くなったとき、相続はどうなるのか?」という問題です。


🔍 高齢層にも広がるNISA ― 70歳以上で438万口座

金融庁の調査によると、
70歳以上のNISA口座数は2024年末時点で約438万口座(前年から9%増)
運用残高も6兆3000億円(前年比44%増)と、過去最大の伸びを示しています。

2025年6月にはさらに457万口座へ。
もはやNISAは「若者のための制度」ではなく、「老後の運用ツール」にもなりつつあります。
当然、相続の場面でNISA口座をどう扱うか――という実務も増えてきました。


⚠️ NISA口座は「相続できない」― 非課税は“ここまで”

まず、最も大事なポイントから。
亡くなった人(被相続人)のNISA口座は、そのまま相続人のNISA口座に引き継ぐことはできません。

亡くなった時点で、その人のNISA口座は「終了」します。
そして、金融機関はその時点で保有していた株式・投資信託を
「死亡日の終値」で課税口座に払い出す処理を行います。

たとえば――

内容数値例
故人の購入価格500円
死亡日の終値1,000円
含み益+500円

この場合、500円の利益に対して税金はかかりません。
NISA期間中の非課税扱いが、死亡日まで適用されるからです。


👪 相続人の取得価格は「死亡日の終値」

では、相続人がこの株を売る場合はどうなるでしょうか。

相続が完了すると、資産は故人の課税口座から相続人の課税口座に移ります。
そのときの取得価格は、死亡日の終値(この例では1,000円)が基準となります。

相続人がその後、株を1,300円で売れば――
差額300円が課税対象となります。


📊 一方、課税口座の資産を相続した場合は?

故人が課税口座(特定口座など)で株を買っていた場合は、扱いが異なります。

内容数値例
故人の購入価格500円
死亡日の終値1,000円
相続人が売却1,300円
相続人の課税対象800円(=1,300−500)

つまり、NISAのときよりも課税対象が大きくなるのです。
もっとも、故人が生きている間の「含み益」部分(500円)は、課税されず“繰り延べ”扱いになります。


📝 相続手続きで必要な書類と流れ

金融機関への連絡から、相続の流れは次のようになります。

▷ 主な手続きの流れ

  1. 金融機関に「死亡の連絡」を行う
  2. 金融機関から「相続上場株式等移管依頼書」などの書類が届く
  3. 「非課税口座開設者死亡届出書」を提出
  4. 除籍謄本・戸籍謄本・印鑑登録証明書などを添付
  5. 相続人名義の課税口座(同じ金融機関)へ移管

相続人が故人と同じ金融機関に課税口座を持っていないと手続きが進められません。
まだ開設していない場合は、死亡の連絡と同時に口座開設の申請をしておくとスムーズです。


💡 FP・税理士からのアドバイス

NISAの相続でよくある誤解は、「そのまま非課税で引き継げる」という思い込みです。
実際には、死亡時点で非課税は終了し、相続人は課税口座で引き継ぐことになります。

ただし、

  • 死亡日までの運用益は非課税
  • 相続人の取得価格は死亡日の終値
    という点を理解していれば、後の譲渡益課税も整理しやすくなります。

相続税申告の際には、NISAや特定口座の評価額を死亡日時点の時価で算定することも忘れずに。


🧭 まとめ ― 「NISAの終わり方」も資産設計の一部

新NISAの非課税枠は「無期限」といわれますが、
人の寿命には期限があります。

老後の運用だけでなく、「相続が起きたときどう扱われるのか」まで考えておくことが、
本当の意味での“終身NISA設計”といえるでしょう。


出典・参考

  • 日本経済新聞「NISA、相続は課税口座」(2025年10月25日)
  • 金融庁「NISA統計(2024年12月末)」
  • 税理士法人レガシィ/チェスター 各税理士コメント

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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