「未来に投資しろ」――OZAWA選手の叫びが、日本企業に突きつける課題

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2025年3月、プロレスリング・ノアのリングで、
若きレスラー OZAWA(小澤 大嗣) 選手がマイクを握った。
マサ北宮選手との熱戦を終えた直後、観客に向かってこう叫んだ。

「もっと所属のレスラーを信じろ!」
「目先の小銭をかき集めるな!」
「未来に投資しろ!」

奇抜なパフォーマンスとは裏腹に、真摯で力強い言葉。
その一言が、観客のみならず、多くのビジネスパーソンの心を打った。
SNSでも「これは企業経営へのメッセージだ」と話題を呼んだ。


■ デフレ思考を打破する「未来志向」

長く続いたデフレの時代、日本企業の多くはコスト削減を優先してきた。
慎重な経営が身についた一方で、成長への投資をためらう“守りの発想”が定着してしまった。
だが、世界はすでにインフレ環境へと移行している。
企業が再び「攻めの投資」に舵を切らなければ、変化の波に取り残される。

OZAWA選手の「未来に投資しろ」という言葉は、
まさに日本企業が抱える構造的課題――投資不足の壁――を突いている。


■ 「人的資本投資」が企業価値を決める

いま株式市場では、「人への投資」が企業評価の新たな基軸になっている。
アモーヴァ・アセットマネジメントの「日本株人材活躍戦略」ファンドは、
次の3つの指標で企業を選定している。

  1. 従業員が増えながら生産性も上昇しているか(人材投資効率)
  2. 付加価値に占める人件費比率が高いか(もうけを人に還元)
  3. 事前予想を上回る売上を継続しているか(過剰投資を抑制)

この視点で上位に入るのが、バンダイナムコ、任天堂、日立製作所など。
“人に投資する企業”の株価パフォーマンスは、明確に高い傾向を示すという。
一時的な賃上げではなく、成長→利益→再投資というループを回す力こそ、
本当の意味での「人的資本経営」である。


■ 成長する“個”を育てる企業文化

低収益事業に人を張り付けたまま改革もしない――。
そんな職場では、若手が自分の成長曲線を描けない。
丸井グループは社員自ら挑戦する「手挙げ文化」を掲げ、
失敗を恐れずトライすることで組織を活性化している。

数字の開示が進む人的資本経営だが、
コモンズ投信の伊井哲朗社長が語るように、
「なぜ取り組むのか、どう価値を生むのか――知りたいのはストーリー」だ。
数字では測れない“意志”こそ、企業の本当の強さを生む。


■ “常勝軍団”に学ぶ、次世代育成の仕組み

プロスポーツの常勝チームには共通点がある。
1軍の裏に、次のスターを育てる2軍・3軍が存在することだ。
勝ち続ける組織は、人材と事業の新陳代謝を仕組み化している。

企業も同じである。
短期の利益にとらわれず、次の成長領域や次世代リーダーに投資できるか。
その姿勢が長期的な企業価値を左右する。


■ 経理・FPの視点から見た「未来への投資」

決算書には「人の情熱」や「挑戦の芽」は載らないが、
それこそが将来の利益を生み出す最も重要な資産だと私は思います。

人的投資を“費用”ではなく“未来への投資”と捉える。
企業も、個人も、成長のための「再投資サイクル」を描けるかどうかが問われている。


■ 終わりに:リングから響く、経営へのメッセージ

OZAWA選手の「未来に投資しろ」という叫びは、
単なる試合後のマイクパフォーマンスではない。
長期停滞に慣れた日本社会全体への警鐘である。

守りから攻めへ。
人へ、未来へ、信じて投資できるか――。
その一言が、私たち一人ひとりの生き方にも重く響く。


📘出典:2025年10月6日 日本経済新聞朝刊「『未来に投資しろ』の叫びを聞け」
🎙参考:2025年3月22日 プロレスリング・ノア 後楽園ホール大会


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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