2025年のJ-REIT市場では、増資額が大きく落ち込みました。不動産市況は堅調で、東証REIT指数も上昇しているにもかかわらず、資金調達が進まなかった点は一見すると不思議に映ります。本稿では、REITの増資額がリーマン・ショック以来の低水準となった背景について、投資口価格、資本効率、不動産価格の動向という観点から整理します。
2025年のREIT増資額の水準
不動産証券化協会の発表によると、2025年のREIT増資額は約1,000億円規模にとどまりました。これは、金融危機の影響が色濃かった2009年以来の低水準です。REITは成長のために物件取得を行い、その資金を公募増資で賄うのが一般的ですが、2025年はこの成長モデルが機能しにくい一年だったといえます。
NAV倍率の低迷と投資主価値
最大の要因として挙げられるのが、投資口価格の割安感です。REITでは、保有不動産の価値を基に算出した純資産価値(NAV)に対して、投資口価格がどの水準にあるかが重要な指標になります。
2025年は指数が上昇する局面でも、NAV倍率が1倍を下回る状態が続きました。この状況で増資を行うと、新たに発行される投資口が既存投資主の価値を希薄化させる結果になりやすくなります。
運用会社側としても、資本効率が厳しく問われる環境下で、NAV倍率1倍割れの増資は市場から評価されにくく、慎重な判断を迫られたと考えられます。
不動産価格上昇という逆風
もう一つの重要な背景が、不動産価格そのものの上昇です。オフィスや物流施設、住宅など主要アセットの価格が高騰するなか、取得後に十分な利回りを確保することが難しくなっています。
増資を行って物件を取得しても、期待される分配金の成長につながらなければ、投資家にとって魅力は高まりません。このため、運用会社は「増資してまで買う物件がない」という状況に直面していました。
2026年に向けた見通し
もっとも、2026年に向けて状況が固定化するとは限りません。投資口価格が回復し、NAV倍率が改善すれば、増資環境は徐々に整う可能性があります。実際に、最大手REITによる公募増資の動きも出始めています。
今後は、単に規模拡大を目指す増資ではなく、資本効率や分配金成長を明確に示せるREITだけが市場の支持を得る局面に入ると考えられます。
結論
2025年のREIT増資額が低水準にとどまった背景には、投資口価格の割安感と不動産価格高騰という二重の制約がありました。REIT市場は停滞しているわけではなく、むしろ成熟段階に入り、成長の質がより厳しく問われている段階にあるといえます。
今後のREIT投資では、指数の動きだけでなく、NAV倍率や資本政策の妥当性に注目する視点が、これまで以上に重要になるでしょう。
参考
・日本経済新聞「REIT増資額、リーマン以来低水準」
・不動産証券化協会 公表資料
・三井住友トラスト基礎研究所 レポート
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

