NISAはなぜ地方で伸び悩むのか― 高齢化・金融アクセス・地域金融機関の役割 ―

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新NISAが始まってから2年が経過しました。制度としての認知度は高まり、全国では国民のおよそ5人に1人がNISA口座を保有しています。一方で、地域別に見ると開設状況には大きな差があり、都市部と地方の間で明確な開きが生じています。
NISAは「全国民向け」の制度であるはずですが、実態としては地域構造や人口動態の影響を強く受けています。本稿では、NISAが地方で伸び悩む背景を整理し、今後の資産形成支援のあり方を考えます。

都市部と地方で広がるNISA開設率の格差

人口比で見たNISA開設率は、東京都で3割を超える一方、東北や北海道では2割を下回る地域が目立ちます。特に青森、岩手、秋田といった県では15%台にとどまっており、全国平均との差は小さくありません。
この背景には、単なる制度理解の差だけでなく、地域の人口構成や所得水準といった構造的要因が存在します。

高齢化が資産形成行動に与える影響

地方でNISA普及が進みにくい最大の要因の一つが、高齢化です。65歳以上人口の比率が高い地域ほど、NISA開設率が低い傾向が見られます。
NISAは長期・分散・積立を前提とした制度であり、運用期間を十分に確保できる現役世代との相性が良い仕組みです。一方、高齢期に入ると、資産形成よりも資産の取り崩しや生活資金の安定確保が重視されやすくなります。
その結果、「制度としては良いが、自分には向かない」と判断されやすく、口座開設に至らないケースが増えると考えられます。

情報格差と金融教育の地域差

地方では、投資や資産形成に関する情報に接する機会が都市部よりも限られがちです。ネット証券を前提とした情報提供は、一定のデジタルリテラシーを必要とし、年齢層が高い地域では心理的なハードルになりやすい面があります。
また、金融教育や投資相談の場が少ないことも、制度理解の遅れにつながります。「仕組みは何となく知っているが、具体的にどう始めればよいかわからない」という段階で止まってしまう人も少なくありません。

地方金融機関のスタンスの違い

地方銀行や信用金庫のNISAへの取り組み姿勢にも差があります。短期的な収益性を重視すると、NISAは必ずしも「稼げる商品」ではなく、積極的な営業対象になりにくいという現実があります。
一方で、対面での説明や継続的なフォローを重視し、長期的な取引関係づくりの一環としてNISAを位置づけてきた金融機関では、比較的高い開設率を実現しています。
NISAを単独の商品として見るのか、資産形成を軸とした総合的な取引の入口と捉えるのかで、結果は大きく変わります。

ネット証券と地銀の新たな動き

近年は、ネット証券と銀行が連携し、地方でのNISA普及を狙う動きも目立ってきました。給与天引き型の積立や、対面相談拠点の設置など、地域特性に合わせたアプローチが広がりつつあります。
地方においては、「自分で選ぶ」よりも「相談しながら進める」仕組みの方が受け入れられやすく、こうした工夫は今後さらに重要になると考えられます。

結論

NISAが地方で伸び悩む背景には、高齢化、情報格差、金融機関の取り組み姿勢といった複合的な要因があります。制度そのものの問題というよりも、「誰に」「どのように」届けるかが問われている段階に入ったと言えるでしょう。
現預金中心の家計構造が少しずつ変わり始めるなか、地域に根ざした金融機関や専門家が、生活やライフステージに即した資産形成の選択肢を示せるかどうかが、今後の普及を左右します。
NISAは都市部だけの制度ではありません。地方だからこそ必要な視点と支援のあり方を、改めて考える時期に来ています。

参考

・日本経済新聞「NISA、地方伸び悩み 開設率、東京32%・青森15% 高齢化と連動も」(2026年1月11日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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