NISAの新たな制度改正案ー「スイッチング解禁」で資産運用はどう変わる?

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先日の日経新聞の朝刊に「NISA、運用資産見直し」という記事が載っていました。
今回は、こちらの記事について考えてみたいと思います。
なお、この件については全6回のシリーズで書かせていただきたいと思います。

1.今回の税制改正要望のポイント

金融庁が2026年度の税制改正要望で打ち出したのが、NISAにおける「運用資産の入れ替え(スイッチング)」を可能にする仕組みです。

これまでNISAでは、保有中の資産を売却すると、その分の非課税枠は復活せず、年間360万円の投資上限から減ったままでした。
今回の要望が実現すれば、売却した簿価分が即座に再投資できるようになり、実質的に「スイッチング」が自由に行えるようになります。

たとえば、若い時は株式中心、定年後は安定型の投資信託へ、といったライフステージに合わせた資産配分が可能になります。

2.なぜ「スイッチング」が重要なのか?

これまでの NISAは「買ったら基本的に持ちっぱなし」が前提でした。
途中で資産を組み替えようとすると、非課税枠を失ってしまうためです。
しかし実際の人生では、次のように投資方針を変えたい場面が多くあります。

・現役世代:資産を増やすために株式や成長型ファンド中心
・退職前後:値動きの少ない債券やインカム型商品へシフト
・高齢期:運用しながら生活費を取り崩す

スイッチング解禁によって、こうした柔軟な資産形成・資産活用が可能になります。

3.高齢者だけでなく現役世代にも開放

当初は「高齢者限定」の解禁案も検討されていましたが、今回の要望では年齢を問わず誰でも利用可能としています。
これは、資産運用のニーズが世代を超えて広がっていることを踏まえたものです。
「老後資金の守り」だけでなく「現役時代の攻め」も、NISA の枠内で戦略的に組み替えられるようになるということです。

4.暗号資産にも動きあり

もう一つの注目点は、暗号資産(仮想通貨)取引の課税方式を見直す要望です。
現在は雑所得扱いで総合課税(最大55%)ですが、これを金融所得課税(税率20%)に一本化しようとしています。
暗号資産を「金融商品」と位置づけ、顧客保護と税制優遇をセットで整備する狙いです。
投資対象が広がる可能性があり、特に若い世代の資産形成に影響を与えるかもしれません。

5. 金融庁の組織再編も

税制要望と同時に、金融庁は組織の再編方針も示しました。
「資産運用・保険監局」と「銀行・証券監督局」(仮称)に分け、資産運用分野への監機能を強化する考えです。
NISA 拡充や暗号資産のルール整備を進めるうえで、体制面からもバックアップを整える狙いといえます。

6.生活者にとってのメリットと課題

今回の改正が実現すれば、NISAは「より長期に、より柔軟に」使える制度へと進化します。

一方で課題もあります。
・頻繁にスイッチングすると、かえって投資成果が下がる恐れがある
・投資商品の選び方やタイミングを誤れば、非課税メリットを活かせない
・高齢期に「取り崩しながら運用」する仕組みは、まだ投資教育やアドバイス体制が十分ではない

結局は、制度が広がるほど「使いこなし力」が問われる時代になっていくのです。
これからの NISAは「貯めるだけ」ではなく「守る」「取り崩す」までを視野に入れた制度へ進化しようとしています。
投資をしている人も、まだ始めていない人も、この流れをきっかけに自分の資産形成のスタイルを考えてみてはいかがでしょうか。

ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回は「NISA のスイッチング、実際にどう使いこなす?」という視点から、具体的なケーススタディを紹介する予定です。

次回以降も、よろしくお願いいたします。

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