M&Aは特別な手段ではない――中小企業経営における現実的な選択肢

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中小企業の経営を取り巻く環境は、この数年で大きく変化しました。人手不足の深刻化、後継者不在、デジタル化や脱炭素への対応、取引先の再編など、個々の経営課題は複雑に絡み合っています。
こうした状況の中で、M&Aは一部の大企業だけの話ではなく、中小企業にとっても現実的な選択肢として位置づけ直す必要があります。

中小企業が直面する構造的な課題

日本の中小企業の多くは、長年にわたり地域や特定の取引先に支えられながら事業を継続してきました。しかし現在は、経営者の高齢化が進む一方で、親族や社内に後継者が見つからないケースが増えています。
従来は親族承継や内部昇格が主流でしたが、働き方や価値観の変化により、その前提は崩れつつあります。結果として、事業自体に問題がなくても、承継の目途が立たずに廃業を選ばざるを得ない企業が少なくありません。

M&Aは「撤退」ではない

中小企業において、M&Aはいまだに「身売り」や「撤退」といった否定的なイメージで語られることがあります。しかし、事業承継型M&Aの本質は、会社を終わらせることではなく、会社を残すことにあります。
第三者に経営を引き継ぐことで、従業員の雇用や取引先との関係、地域で培ってきた技術や信用を次世代につなぐことが可能になります。これは、廃業とはまったく異なる経営判断です。

成長戦略としてのM&Aという視点

M&Aは事業承継の手段にとどまりません。人材や技術、販路を迅速に獲得する手段として、中小企業の成長戦略にもなり得ます。
自社内での育成や投資には時間がかかる一方、外部の経営資源を取り込むことで、変化のスピードに対応できる可能性が広がります。オーガニックな成長とM&Aによるインオーガニックな成長は対立するものではなく、補完関係にあります。

受け身ではなく「常備戦略」として考える

中小企業経営において重要なのは、M&Aを「良い話があれば検討するもの」として受け身に捉えないことです。
自社の強みや弱み、将来の事業継続や成長に必要な経営資源を整理し、その延長線上にM&Aという選択肢を常に置いておく。この姿勢そのものが、経営リスクへの備えになります。

結論

M&Aは特別な手段でも、非常時の最終手段でもありません。中小企業にとっては、事業承継と成長戦略の双方に関わる現実的な経営判断の一つです。
早い段階からM&Aを含めた複数の選択肢を持つことが、会社と従業員、そして経営者自身の将来を守ることにつながります。

参考

・日本経済新聞「M&Aは特別な手段ではない」PwCコンサルティング パートナー 久木田光明(2025年12月16日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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