FP×AI革命シリーズ 第1回 AIはFPを脅かすのか? ― 米国の現場が示す「未来の警告」

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AIやロボットが人類を脅かすというテーマは、古くから映画や小説の定番でした。しかし、2020年代に入り、このフィクション的な物語は、現実世界へと静かに侵食しつつあります。特に、金融・資産形成を支える「ファイナンシャル・プランナー(FP)」という職業にとって、AIの存在感は無視できないものになってきました。すでに米国では、FP業界の重鎮たちが「AIによる業界構造の変革」を真剣に議論しており、日本も数年遅れで同じ状況に直面するのは避けられないと考えられています。

本稿では、筆者が米国で聞いたFPの生の声をもとに、「AIはどこまでFPを脅かすのか?」「何が米国FPに警戒感を抱かせているのか?」を紐解きながら、AI革命がもたらす最初の衝撃について整理します。

1. 米国FPが語る“静かな危機感”

米国でのFPたちが最も熱心に議論しているのは、「AIがFPにとって脅威になりつつある」というテーマだそうです。また、あるベテランFPは次の言葉を口にしたそうです。

“若い顧客は、まずAIに質問する。FPに相談する前に、AIに聞くという行動が完全に定着し始めている。”

この言葉は、米国での顧客行動が急速に変化していることを象徴しています。

Z世代やミレニアル世代の顧客は、スマートフォンが身体の一部のようになっており、何をするにもAIアシスタントを使うことが当たり前になっています。

  • ポートフォリオの組み方
  • 運用方針
  • 老後資金の試算
    こうしたFPの基礎的な役割ですら、AIに置き換えられつつあります。

さらに米国では、人間と見分けがつかないレベルのAIアバターが誕生しており、顧客対応をAIアバターが行う未来は、もはやSFではありません。
この現実が、米国FPに明確な危機意識を芽生えさせているのです。


2. AIがもたらす“もうひとつの脅威”

FP自身も、日々の業務にAIを取り入れています。
資料作成や情報収集は、ChatGPTなどの生成AIを活用することで以前より格段に速くなり、事務所運営も少人数で対応できるようになってきました。

これは一見メリットのようですが、裏側には次のような構造的な変化があります。

  • スタッフ採用が減る
  • 事務作業の多くがAIに置き換わる
  • 全体としてFPの従事者数が減少する圧力がかかる

FP自身がAIを使っているからこそ、「AIの効率化はFPを減らす方向にも働く」という皮肉な現象が起きているのです。


3. 過去にも似た構造変化はあった ― ネット証券の例

筆者が強く思い出すのは、2000年代初頭に日本で広がった“ネット証券 VS 対面証券”の議論です。

当時、証券業界では
「ネット証券が普及しても、対面取引はなくならない」
という意見が支配的でした。なぜなら「人と人の信頼関係があるから」という根拠があったためです。

しかし、20余年が経過した結果、市場は大きくネット証券にシフトしました。
顧客の価値観は「人対人」から「便利で安くて早いサービス」へと移り変わったのです。

米国FPが抱える危機感は、この歴史を深く意識しているといえます。
人間の専門家は、過去にもITにより市場シェアを奪われてきました。
その構造が、AIによって再び起こりつつあるのです。


4. FP業界に迫る“二つの圧力”

AI普及に伴い、FPは次の二つの方向から圧力を受ける可能性があります。

① AI活用による効率化 → FPの人数が減る

AIが事務作業を代替し、生産性が大きく向上します。
しかし同時に、業界全体の雇用は減る方向に向かいます。

② 若い顧客がAIだけで完結 → FP需要の縮小

すべての顧客がAIを使えるようになると、FPに相談する必要がなくなる部分が増えていきます。

この「効率化」と「需要縮小」が同時に起きることで、業界が急激に縮小する未来も想定されるのです。

米国FPは、この二重構造をはっきりと意識しているからこそ、危機感を持って議論をしているのでしょう。


5. では、FPはAIに消されてしまうのか?

AIは確かに強力なツールです。しかし、FPの本質は「書類作成」にあるわけではありません。
FPの価値は、顧客の人生と向き合い、将来の選択肢を共に整理し、寄り添いながら意思決定を支援することにあります。

  • 顧客が何を不安に感じているのか
  • 家族の事情はどうなっているのか
  • 本人が気付いていない価値観は何か

こうした「人間理解」に関する領域は、AIの苦手分野です。

AIがFPを脅かすのは確かですが、FPを完全に消すことはできません。
ただし、AIを使いこなせないFPは、急速に競争力を失っていく可能性があります。


結論

AIはFPにとって脅威であり、同時に強力な味方でもあります。
米国で起きている変化は、日本にも確実に訪れます。
特に顧客行動の変化と業務の効率化という二重の圧力は、FP業界に大きな影響を与える可能性があります。

FPに求められるのは、AIを拒絶することではなく、AIを理解し、使いこなし、共存していく姿勢です。
AI革命の波は止められません。
しかし、その波を乗りこなすか、飲み込まれるかは、FP自身の選択にかかっています。


出典

・日本FP協会「Trend Watch」掲載記事(2024–2025)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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