ChatGPTで“財務KPIを自動生成する”方法

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「KPI(重要業績評価指標)」は、会社の健康状態を測る“バロメーター”です。
売上高、営業利益率、ROE、在庫回転率――指標の数は多いですが、
「どれを重視すべきか」「どう改善すべきか」で迷う経営者や経理担当者は少なくありません。

そこで登場するのが、生成AI(ChatGPTなど)によるKPI設計支援です。

AIに会社の財務データや事業内容を入力すれば、
経営の目的に沿ったKPIを自動生成・優先順位づけしてくれる。
まさに“経営の参謀”としての新しい使い方です。


第1章 AIは「数字を選ぶ」より「意味を見抜く」

KPI設定で最も難しいのは、“何を測るべきか”を決めることです。
AIは過去のデータや目標との関係をもとに、
数字の相関やトレンドを分析し、「本当に見るべき指標」を抽出します。

たとえば、ChatGPTに次のように指示してみましょう。

【役割】あなたは経営分析の専門家です。  
【内容】以下の決算データをもとに、経営目標達成のために最も重要な財務KPIを5つ提案してください。  
【形式】①指標名②算出式③目標水準④改善策⑤経営への影響の5項目で表形式にまとめてください。  
【制約】中小企業にも実用的な内容にし、専門用語を避けてください。

AIは、以下のような出力を提示します。

KPI算出式目標改善策経営効果
売上高営業利益率営業利益÷売上高8%以上固定費削減・価格見直し収益構造の安定化
流動比率流動資産÷流動負債150%以上在庫圧縮・短期借入見直し資金繰り改善
総資産回転率売上高÷総資産1.2倍以上不要資産の売却効率的な資産活用
営業CF比率営業CF÷売上高10%以上売掛金回収強化実質的なキャッシュ創出力
人件費率人件費÷売上高25%以下生産性向上策利益率の底上げ

AIの強みは、「数字を並べる」だけでなく、
改善策と経営効果の関係性を説明できることです。


第2章 ChatGPTが作る“会社別オーダーメイドKPI”

AIの分析は、会社の業種・成長段階に合わせて最適化できます。

🔹 製造業の例

【役割】あなたは製造業の経営企画担当です。  
【内容】以下の損益計算書・貸借対照表をもとに、製造業に特有の財務KPIを作成してください。  
【形式】①在庫回転率②労働生産性③設備稼働率④原価率改善指標⑤営業利益率を含めて出力。  
【制約】中期経営計画との連動を考慮してください。

→ AIは「設備稼働率」「原価率改善幅」など、現場改善とリンクするKPIを提示。

🔹 サービス業の例

【役割】あなたはサービス業の経営アドバイザーです。  
【内容】以下の財務データから、サービス品質と収益性を両立するKPIを作成してください。  
【形式】顧客リピート率・平均単価・人件費率・稼働率・営業利益率の5項目で分析。  

→ 「人件費率と顧客満足度の関係」など、AIが因果関係を文章で補足。


第3章 AIがKPIの“改善提案”まで出す時代に

KPIは“測る”だけでは意味がありません。
重要なのは、「どうすれば数値が改善するか」を示すことです。

ChatGPTは、指標の変動要因を自動で分析し、行動レベルの提案を出せます。

【役割】あなたはCFOの参謀です。  
【内容】以下のKPIデータのうち、目標を下回っている項目を抽出し、改善提案を出してください。  
【形式】①課題KPI②原因③具体的施策④期待効果を表形式で。  
【制約】短期(3か月以内)で実行できるものを優先してください。

→ 出力例:

課題KPI原因改善策期待効果
営業CF比率売掛金回収の遅延入金サイト短縮・請求管理AI導入キャッシュ回転期間短縮
原価率材料費高騰・購買ロスサプライヤー交渉・代替調達利益率+2pt改善
総資産回転率遊休資産の放置不要設備売却・リース転換ROA向上

このように、AIは**「指標を見るだけでなく、動かすための道筋」**まで提案できるのです。


第4章 AI×経営分析を成功させるコツ

AIでKPIを自動生成するときのポイントは3つです。

1️⃣ 経営目的を明確に伝える
 → 「成長重視」「安定経営」「資金繰り改善」など、目的を冒頭で指定。

2️⃣ 制約条件を与える
 → 「中小企業向け」「非上場」「短期集中」など条件を明示すると精度が上がる。

3️⃣ 定期レビューに組み込む
 → AIに毎月「前回からの変化を比較して」と指示し、進捗確認を自動化。


第5章 AIが変える“経営会議”の風景

AIによるKPI分析を導入した企業では、
「数字の報告」で終わっていた経営会議が、
「施策の議論」に変わりつつあります。

AIが提示するのは、“事実”と“可能性”の間にある仮説です。
人がそれを検証し、現場の知見と組み合わせることで、
より深い洞察が得られます。

経理がAIを使ってKPIを可視化する――
それは、単なる効率化ではなく、経営の意思決定を支える進化なのです。


まとめ:AIは「数字を考える力」を鍛える道具

AIにKPIを作らせることの本当の価値は、
“人が考えるための材料を増やすこと”にあります。

AIが数字を選び、
人がその意味を語り、
組織が行動に変える。

この循環こそ、AI時代の理想的な経営管理プロセスです。

AIを上手に使いこなす経理・管理職は、
「数字の翻訳者」から「未来の設計者」へ――確実に進化しています。

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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