CFOの7割が税務実務未経験という現実――税務は守りか、それとも攻めか

税理士

企業経営の中枢を担うCFO。
財務、資金調達、予算管理、M&A――その役割は年々広がっています。

その一方で、税務の実務経験を持つCFOは3割弱にとどまるという調査結果が公表されました。

税務はCFOの所掌範囲でありながら、実務経験者は少ない。この構造は何を意味するのでしょうか。本稿では、調査結果をもとに、CFOと税務の関係、そして税務の位置づけが今後どう変わるのかを整理します。


調査結果の概要

PwCジャパングループが実施したCFO意識調査によれば、税務の実務経験があると回答したCFOは28%にとどまりました。

一方で、

  • 財務経験あり:82%
  • 予算・経営管理経験あり:81%
  • 税務経験あり:54%
  • 税務実務経験あり:28%

という結果でした。

税務は93%が「掌握範囲」と回答しているにもかかわらず、実務経験者は少ないという状況です。

この数字は、税務が「管理対象」ではあっても、「キャリアの中心」にはなりにくい現実を示しています。


なぜ税務経験者が少ないのか

理由はいくつか考えられます。

1. 税務は専門職として固定化しやすい

日本企業では、税務部門は専門人材が長く所属する傾向があります。
税務担当者は高度な専門性を持ち、異動の幅が限定的になりやすい。

その結果、税務経験を経てCFOに昇進するキャリアパスは、財務や経営企画に比べて少なくなります。

2. 税務は「守り」の機能と見られがち

調査では、税務領域が「キャッシュ創出機能」として十分活用されていない可能性が指摘されています。

日本企業の税務は、
・リスク回避
・税務調査対応
・コンプライアンス重視

といった「守り」の役割が強調されてきました。

そのため、経営戦略と直結する部門として位置づけられにくかった面があります。


M&A重視の流れとの対比

調査では、68%が「事業構造見直しのためM&Aに取り組みたい」と回答しています。

一方で、過去のM&Aで「期待した成果が実現できなかった」と答えた企業も一定数あり、その理由としてPMIの不十分さが挙げられています。

M&Aと税務は本来、極めて密接な関係にあります。

  • スキーム設計
  • 繰越欠損金の活用
  • 組織再編税制の適用
  • 国際課税対応

これらはすべて税務の領域です。

CFOがM&Aを重視する一方で、税務実務経験者が少ないという構造は、戦略と税務の分断を示唆しているともいえます。


インフレ時代の税務の役割

調査では、インフレ時代に重視する対応として、

  • 資本効率向上(57%)
  • 迅速な価格転嫁(55%)
  • 事業ポートフォリオ見直し(48%)

が挙げられています。

しかし、これらはすべて税務と無関係ではありません。

例えば、

  • 資本効率と税コスト
  • 価格転嫁と消費税対応
  • ポートフォリオ再編と組織再編税制

税務は単なる計算業務ではなく、企業価値に直接影響する要素です。

税務を「コスト」としてだけでなく、「経営変数」として扱う視点が求められます。


税務は守りから戦略機能へ転換できるか

CFOの7割が税務実務未経験という事実は、見方を変えれば大きな転換点でもあります。

税務が専門部門に閉じたままであれば、

  • 経営判断との距離が広がる
  • M&Aの精度が下がる
  • グローバル税務リスクが顕在化する

といった課題が生じます。

一方で、税務を経営戦略の中核に組み込めば、

  • キャッシュ創出機能
  • 投資回収期間の短縮
  • 税引後ROICの最大化

といった攻めの機能に転換する可能性があります。


結論

CFOの税務実務経験が3割弱という調査結果は、単なる人材構成の問題ではありません。

それは、日本企業における税務の位置づけを映し出す鏡でもあります。

税務を守りの専門領域として閉じるのか。
それとも、資本政策やM&Aと統合した戦略機能へと昇華させるのか。

インフレ時代、国際課税強化、税制の高度化が進む中で、税務は経営の周辺ではなく中枢に近づいています。

CFOに税務経験が少ないという現実は、課題であると同時に、変革の余地が大きい領域であることを示しています。

税務は本当に守りの機能のままでよいのか。
いま、改めて問い直すべき局面に入っています。


参考

・日本経済新聞 2026年2月17日朝刊
「税務実務経験は3割弱 PwCのCFO意識調査」

・PwCジャパングループ CFO意識調査(2025年9~10月実施)

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