私たちは長らく、選択肢が多いことを豊かさの象徴としてきました。
自由に選び、意思決定できることは、民主主義や資本主義を支える根幹とされてきたからです。
しかし現在、その前提が揺らぎ始めています。
情報は爆発的に増え、人間が処理できる限界を超えつつあります。
こうした状況の中で、α世代が向き合う社会では、選択そのものの質が問われるようになっています。
情報過多がもたらす選択の限界
世界のデータ通信量は過去10年で急拡大し、人間が一つひとつ吟味することは現実的ではなくなりました。
情報が増えるほど判断が正確になるとは限らず、むしろ意思決定の遅れや誤りを招く場面も増えています。
過剰な情報による経済損失が指摘されていることからも、選択の負担が社会全体のコストになっていることが分かります。
選択の自由は、もはや無条件に歓迎されるものではなくなっているのです。
チョイパという新しい能力
こうした課題に対して注目されているのが、チョイパ(チョイス・パフォーマンス)という考え方です。
これは、選択肢の多さではなく、選択の成果を最大化する能力を指します。
例えば、通販サイトではAIが対話を通じて希望条件を整理し、膨大な商品群から現実的な選択肢を提示します。
AIに相談しながら選択した場合、購入に至る確率が大きく高まるというデータもあります。
重要なのは、AIが選択を代行するのではなく、人間の判断を補助する点にあります。
α世代にとってAIは、意思決定の相棒として位置づけられつつあります。
民主主義への応用──民意を「まとめる」AI
この考え方は、政治の分野にも広がっています。
米国では、AIを活用して多様な市民の意見を整理し、政策の選択肢として提示する試みが始まっています。
数千人規模の意見を集約し、少数の主張にまとめることで、参加者の多くが自分の考えが反映されたと感じたとされています。
このプロジェクトを主導したのは、グーグル傘下の Jigsaw です。
個人の選択が社会を形づくるという考え方は、経済学者 フリードリヒ・ハイエク の思想にも通じます。
ただし、現代では個々の声をそのまま政策に反映することが難しくなっています。
そこでAIが、民意を集約し、選択可能な形に変換する役割を担い始めています。
政治はAIに置き換わるのか
AI時代の政治については、テクノロジーと人間の役割分担が重要になります。
チームみらい党首の 安野貴博 氏は、政治の最終的な主導権は人間が持ち続けると述べています。
選挙は情報伝達量が極めて少ない仕組みであり、多様化する価値観を反映しきれていないという指摘もあります。
AIが人と人の間に入り、議論や合意形成を滑らかにすることで、同じ時間でもより多くの意思決定が可能になるという見方です。
間接民主制が直ちに別の制度に置き換わるわけではありませんが、部分的に新しい仕組みが導入される可能性は高まっています。
AI時代に求められる人間の役割
一方で、AIには偏りや誤りのリスクもあります。
企業のAIは営業戦略に影響される可能性があり、政治やSNSのアルゴリズムも個人の視野を狭める恐れがあります。
そのため、AIの答えを別のAIで検証する、複数の視点を意識的に取り入れるといった姿勢が重要になります。
チョイパとは、AIを疑い、使いこなす力も含んだ概念です。
結論
情報過多の時代において、選択の自由はそのままでは重荷になりかねません。
α世代が直面する社会では、AIと協働しながら選択の質を高めることが、個人と社会の利益を左右します。
チョイパの高い選択が積み重なれば、民主主義も資本主義も、再び機能を取り戻す可能性があります。
AIは脅威ではなく、人間の選択力を進化させる道具として位置づけられる時代に入っています。
参考
・日本経済新聞「α-20億人の未来(7)情報過多、人間の限界超す」
・日本経済新聞「α-20億人の未来 政策合意、AI使い10倍に」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
