AIが業務を代替するのではなく、業務を“拡張”する時代に入りました。
1人が複数のロボットを同時に管理する実証実験が進むなかで、問われているのは台数ではありません。
問われているのは、「人間は何を担うのか」という根本的な役割の再設計です。
AIが実務を処理するなら、人間は何を管理するのか。本稿では、その構造を整理します。
1. 操作する人から、評価する人へ
たとえば、サイバーエージェントが進める複数ロボット統合管理の実証では、AIが状況を整理し、人間は例外対応に専念します。
ここで起きている変化は明確です。
従来:
- 人間が現場を動かす
- 人間がすべて判断する
AI時代:
- AIが標準処理を行う
- 人間は「判断の妥当性」を評価する
管理者の役割は、「実行」から「評価」へ移行します。
これは労働の質的転換です。
2. 例外処理の設計者になる
AIは標準化された状況に強い一方、想定外には弱いという特徴があります。
したがって管理する側の仕事は、
- どこまでをAIに任せるかを決める
- 例外の閾値を設計する
- 判断基準を明文化する
という設計業務になります。
単にトラブル対応をするのではなく、「どの段階で人間に戻すか」を決める仕事です。
これは現場管理というよりも、ルール設計の仕事に近づいていきます。
3. 全体最適を考える視点
複数ロボットを一元管理するシステムを販売するTOPPANホールディングスは、デジタルツイン技術を活用しています。
ここで重要なのは、個々のロボットの効率ではなく、「全体の流れ」です。
AI時代の管理者は、
- 個別最適ではなく全体最適を見る
- リソース配分を動的に調整する
- リスクを分散する
という役割を担います。
管理は“監視”ではなく、“設計と調整”に近づいていきます。
4. 倫理と責任の最終担保者
AIが判断を補助する時代でも、責任主体は人間です。
- 誤作動が起きた場合
- 誤った案内がされた場合
- 不適切な対応が行われた場合
最終的な説明責任は管理者にあります。
したがって、管理する側の重要な役割は、
「なぜその判断になったのかを説明できること」
です。
AIのブラックボックス化が進むほど、この説明能力の重要性は高まります。
5. 人を動かすのではなく、仕組みを動かす
従来の管理職は、
- 部下を指示する
- 勤怠を管理する
- 作業を監督する
という役割でした。
AI時代の管理は、
- システムを設計する
- データを読み解く
- 改善サイクルを回す
ことが中心になります。
人を直接動かすのではなく、仕組みを通じて成果を出す。
これが“管理する側”の核心になります。
6. 管理者に求められる能力の変化
必要とされるのは、テクノロジーそのものよりも、
- 構造を理解する力
- 抽象化する力
- リスクを予測する力
- 判断を言語化する力
です。
AIは計算が得意ですが、「価値判断」はできません。
何を優先するのか、どこまで効率を追求するのか。そこに人間の役割があります。
結論
AI時代の管理者は、現場の監督者ではありません。
設計者であり、評価者であり、最終責任者です。
1人で50台を管理できるという話の本質は、生産性の飛躍ではなく、「人間の役割の純化」にあります。
実行はAIへ。
判断基準の設計と責任は人間へ。
管理とは、もはや「管理」ではなく、「構造をつくる仕事」に変わりつつあります。
参考
日本経済新聞
「ロボットであなたも『50人力』 AI進化、1人複数台操作」
2026年2月16日 朝刊

