近年、経理・会計分野でもAI活用が急速に進んでいます。請求書の自動読取や仕訳の自動生成はすでに珍しいものではなくなりましたが、「専門性の高い判断領域までAIが担えるのか」という点については、慎重な見方も根強くありました。
こうした中、経理・会計に特化したAIが、日商簿記1級に合格する水準に到達したというニュースは、経理実務の将来像を考えるうえで重要な示唆を与えています。
簿記1級合格水準とは何を意味するのか
日商簿記1級は、企業会計原則や会計基準を前提に、複雑な取引を理論的に処理できる能力が求められる試験です。
単なる記憶や計算力だけでなく、取引の経済的実態を理解し、適切な会計処理を選択できるかが問われます。
今回報じられた経理AIは、数値計算問題や選択式問題において、簿記1級レベルで極めて高い正答率を示したとされています。
これは、仕訳ルールの暗記にとどまらず、会計ロジックそのものを学習・再現できる段階に近づいていることを意味します。
経理AIが得意とする領域
このようなAIが特に力を発揮するのは、次のような領域です。
・大量の伝票処理や定型的な仕訳作業
・会計基準に沿った機械的な判定
・過去ルールに基づく一貫した処理
・企業ごとの会計ルールを反映した自動処理
人手で行う場合、時間と集中力を要する作業ほど、AIとの相性は良いといえます。
経理担当者が長時間を費やしてきた作業の多くは、今後さらにAIに置き換わっていく可能性があります。
2027年リース会計基準改正との関係
2027年には、新しいリース会計基準が適用される予定です。
この改正では、従来オフバランスで処理されていた取引についても、原則として資産・負債の計上が求められ、企業の経理負担は大きく増えると見込まれています。
リース契約の判定や計算処理は、形式的な条件整理と正確な数値処理が不可欠です。
この点において、会計基準を学習したAIが支援に入ることで、実務負担の軽減や処理の平準化が期待されます。
それでも残る「人にしかできない仕事」
一方で、簿記1級水準の知識をAIが持ったとしても、経理の仕事がすべて置き換わるわけではありません。
例えば、
・取引の背景や意図を踏まえた判断
・グレーゾーンにおけるリスク評価
・経営判断につながる数値の解釈
・社内外への説明責任
これらは、単なる正解処理ではなく、状況判断やコミュニケーションを伴う領域です。
AIの高度化は、経理担当者を不要にするというより、「役割を変える」方向に進んでいると考えられます。
経理人材に求められる視点の変化
今後の経理人材には、仕訳を正確に切る力だけでなく、
・AIの処理結果を検証できる力
・会計基準の背景を説明できる力
・数値を経営にどう活かすかを考える力
がより強く求められていきます。
AIを使いこなす側に立てるかどうかが、経理人材としての価値を左右する時代に入りつつあります。
結論
簿記1級合格水準の経理AIの登場は、経理実務の自動化が新たな段階に入ったことを示しています。
定型処理や基準適用はAIに任せ、人は判断・説明・戦略に集中する。
この役割分担を前提に、経理の仕事そのものが再定義されていく局面にあるといえるでしょう。
参考
日本経済新聞
簿記1級合格水準の経理AIに関する記事(2026年2月4日夕刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
