AIによる決算レビュー ― ChatGPTで“決算書を読む力”を磨く

会計
青 幾何学 美ウジネス ブログアイキャッチ note 記事見出し画像 - 1

決算書を読む――それは経理だけでなく、経営に携わるすべての人に求められるスキルです。
しかし実際には、「数字は追えるけれど、意味を読み解くのが難しい」と感じる人も多いのではないでしょうか。

そんなとき頼れるのが、生成AI(ChatGPTなど)です。
AIは決算書の数字を分析し、
「なぜこの数値になったのか」「どんな課題があるのか」を論理的に整理してくれます。

AIを使えば、「数字を見る経理」から「数字の意味を語る経理」へ。
決算レビューの質が、一気に変わります。


第1章 AIが得意なのは「全体像を整理する」こと

決算書(BS・PL・CF)は、相互に関連する“3つのストーリー”です。
AIは、この関係性を瞬時に整理し、一貫性のある解釈を提示できます。

たとえば、AIに次のようなプロンプトを投げてみましょう。

【役割】あなたは財務分析の専門家です。  
【内容】以下の決算書データ(BS・PL・CF)をもとに、当期の財務状況を評価してください。  
【形式】①概要②改善が必要な点③次期に向けた提案の3部構成で。  
【制約】専門用語は最小限にし、経営層にもわかる言葉で説明してください。

ChatGPTは、
「売上は前年比+5%だが、営業CFの伸びが鈍化」「在庫増加に伴う資金繰りリスク」など、
ストーリーとしての決算分析を生成します。


第2章 決算レビューに使えるAIプロンプト集

① 財務健全性の診断

【役割】あなたはCFOの補佐官です。  
【内容】以下の財務データから、収益性・安全性・効率性の主要指標を算出し、業界平均と比較してください。  
【形式】表形式で指標(ROA・流動比率・総資産回転率など)を整理し、コメントを添えてください。  
【制約】COT(連鎖思考)で分析過程を明示してください。

→ 経理担当者が苦手とする「分析の言語化」をAIが補ってくれます。


② キャッシュフローの健全性分析

【役割】あなたはキャッシュフロー管理の専門家です。  
【内容】3期分のキャッシュフロー計算書を分析し、資金繰りの課題と改善案を提案してください。  
【形式】①営業CF②投資CF③財務CFの3区分で現状・課題・提案を整理。  
【制約】短期(3か月)・中期(1年)の改善策を分けて示してください。

→ 「投資過多による現金減少」「運転資金の偏在」などをAIが指摘。


③ 利益構造の変化分析

【役割】あなたは管理会計の専門家です。  
【内容】以下の損益計算書を比較し、利益率変動の主因を特定してください。  
【形式】①増減要因(売上・原価・販管費)②影響額③改善提案を表形式で。  
【制約】数値根拠を明示し、要因を定量的に説明してください。

→ AIは「売上総利益率低下=原価率上昇」「人件費増=新事業立ち上げ」などの“背景要因”を解釈してくれます。


第3章 AIレビューを信頼するためのチェックリスト

AIの分析を鵜呑みにせず、「検証」する視点を持つことが重要です。
以下の5項目をレビュー時の確認リストとして活用しましょう。

チェック項目内容確認者
① データの正確性数値が最新版か、転記ミスがないか経理担当
② 指標の妥当性算式・基準が会計ルールに沿っているか会計責任者
③ AIの解釈の整合性他の財務項目との整合を取れているかチームレビュー
④ 提案内容の実現性実務・経営計画上の実行可能性管理職
⑤ 記述の中立性感情的・誇張的な表現がないか最終承認者

AIの出力は“参考意見”として扱い、最終判断は常に人間が行う。
この姿勢を徹底することが、AIレビュー成功の鍵です。


第4章 AIが「決算を学ぶ教材」になる

AIは、実務者だけでなく教育ツールとしても活用できます。
新人研修やFP講座などで次のように使うと効果的です。

  • 「この決算書を中学生でもわかるように説明して」とAIに依頼
  • 「財務分析をストーリー形式で教えて」と指定
  • 「改善提案を3つ挙げ、その根拠を説明して」と質問形式にする

これにより、AIが「対話型の財務教育者」になります。
理解が深まり、“数字を語れる人”が育ちます。


第5章 AIレビューが変える経理の役割

AIの登場で、経理の価値は「記録すること」から「洞察すること」へと移行しています。

従来の経理AI活用後の経理
数字をまとめる数字の意味を説明する
実績を報告する次を予測し提案する
ミスを防ぐ成長を導く

AIが分析を行い、人がその意味を経営陣に伝える。
この連携が、経理を“経営パートナー”に進化させる鍵です。


まとめ:AIは数字の「翻訳者」である

AIは、決算書という“数字の言語”を、
人間の言葉に“翻訳”してくれる存在です。

AIが導き出した結論をどう理解し、どう活かすか。
その判断力こそ、AI時代の経理に求められる本当のスキルです。

AIを使えば使うほど、数字の裏にある「会社の物語」が見えてきます。
そして、その物語を語れる人が――
これからの経理をリードしていく人なのです。

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました