AIと若手雇用の現実 ― 最新研究が示す衝撃的な事実

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生成AIが一般に普及してから2年あまり。ChatGPTや画像生成AIをはじめ、多くの人がAIを身近に感じるようになりました。その一方で、ずっと議論されてきた問いがあります。
「AIは人間の仕事を奪うのか?」

これまで数多くの予言やシナリオが語られてきました。たとえば「2030年までに半分の職業がなくなる」「弁護士や会計士も危ない」といった刺激的な見出しを覚えている方も多いでしょう。
しかし、それらはあくまで「予測」にすぎませんでした。実際に労働市場でどのような変化が起きているのかをデータで示した研究は、これまでほとんど存在しなかったのです。

ところが2025年8月、米国で発表された二つの実証研究が状況を一変させました。AIの導入が、若手雇用に深刻な影響を与えていることが数字で示されたのです。


米国の給与データが示す「20代の雇用減少」

一つ目の研究は、米国企業の月次の給与支払データを用いたものです。
分析の結果、生成AIが普及し始めた2023年ごろを境に、AI導入の進んだ企業ほど20代社員の職が急激に減少していることが明らかになりました。

さらに興味深いのは、同じ企業でも40代以上の雇用にはほとんど影響が見られなかった点です。つまりAIは、若手と中堅以上の労働者に対して異なるインパクトを与えているのです。

対象となった職種はプログラマーに限られません。顧客対応、営業、マーケティングなど、むしろホワイトカラー全般に広がっているのが特徴です。AIは「一部のIT職だけに影響するもの」ではなく、広い範囲で若手の雇用を圧迫していることが浮き彫りになりました。


LinkedInデータが示す「採用の減少」

二つ目の研究は、ビジネス特化型SNS「LinkedIn」などの人材データを活用したものです。
ここでも若手雇用の減少傾向が確認されましたが、その内訳は意外なものでした。

  • 大量の解雇やリストラが起きたわけではない
  • 実際の雇用減少の多くは「新規採用の縮小」によるものだった

つまり、AIは「今いる人を辞めさせる」のではなく、新しい人を雇わなくても仕事が回る状態を作っているのです。これは企業にとっては人件費の抑制につながり、短期的には合理的な判断といえます。しかし、若者にとってはキャリアの入り口が狭まることを意味します。


なぜ若手に集中するのか?

では、なぜ20代の若手雇用にしわ寄せが集中するのでしょうか。考えられる要因はいくつかあります。

  1. 経験の浅さをAIで補えるから
    若手がこれまで担ってきた「定型業務」「調査や資料作成」などは、生成AIが得意とする分野です。
  2. 教育コストを削減できるから
    新人をゼロから育てるより、AIを導入して既存社員に補助させた方が効率的という判断が働きます。
  3. リスク回避の傾向
    不確実な時代にあえて人を増やすより、AIを活用して業務量を吸収しようとする経営判断が強まっています。

これらの要素が重なり、若手採用が抑制されていると考えられます。


日本にとっての示唆

今回の研究は米国を対象にしたものですが、日本にとっても無関係ではありません。むしろ少子高齢化が進み、労働力不足が深刻化する日本では、AI導入のインパクトはさらに大きくなる可能性があります。

  • 新卒一括採用の仕組み
    AIによって「新人の仕事」が縮小すれば、企業は従来のように大量に新卒を採用して育てるモデルを維持できなくなるかもしれません。
  • 中途採用・即戦力重視へのシフト
    日本企業も「育成型」から「即戦力型」に移行し、若手がキャリアを築くハードルは上がる可能性があります。
  • 学び直し(リスキリング)の重要性
    若手ほど「AIと共存できるスキル」を早期に身につけることが不可欠になります。

私たちにできる備え

ここまでの話を聞いて「AIはやっぱり若者の敵なのか」と思う方もいるかもしれません。しかし、それは一面に過ぎません。

確かにAIは若手の採用数を減らす要因になりますが、同時に「AIを使いこなせる人材」には大きなチャンスを与えます。企業が求めるのは、AIを単なる置き換えとして使うのではなく、AIと協働して新しい価値を生み出せる人材です。

だからこそ、これから社会に出る若者やキャリアを模索する人は、次のような視点を持つことが重要です。

  • AIが苦手とする領域(創造性・対人スキル・専門判断)を磨く
  • AIを活用するスキル(プロンプト設計・データ分析力)を学ぶ
  • キャリアを柔軟に描き直す発想を持つ

まとめ

今回紹介した米国の研究は、AIが実際に労働市場へ与え始めている影響を明確に示しました。

  • 20代の雇用は減少傾向
  • 減少の多くは「採用縮小」によるもの
  • AIは「今いる人を減らす」のではなく「新しく雇わなくてもよい環境」を作っている

これは「AI=大量解雇」という単純な構図ではなく、より複雑で長期的な構造変化を意味します。

若手にとっては厳しい現実ですが、同時に「AIを使いこなすことで差をつけられるチャンス」でもあります。AI時代を生き抜くには、受け身ではなく能動的にスキルを磨き、キャリアを設計していくことが欠かせません。


📌 参考 日本経済新聞朝刊(2025年9月26日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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