AIで監査報告書を作る ― ChatGPTを“補助監査人”にする方法

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決算書を精査し、取引の妥当性を確認し、改善提案をまとめる――
監査業務は、精密さと慎重さを求められる仕事です。

しかしその一方で、「報告書作成」「証跡整理」「リスク分析」などの作業に、
多くの時間が費やされてきました。

そこに登場したのが、生成AI(ChatGPTなど)
AIを“補助監査人”として活用することで、
報告書作成をスピードと正確性の両立で進められるようになっています。


第1章 AI監査の役割は「考える補助輪」

AIを監査に使う際の基本的な考え方は、
「AIが判断する」のではなく、「AIが考えるのを助ける」というものです。

AIは、

  • 数字の整合性を確認
  • リスク項目を抽出
  • 記載の矛盾を検出
    といった“下支え”を得意とします。

つまり、AIは監査チームのサブメンバーとして、
「文章構成」や「論点整理」をスピードアップするパートナーなのです。


第2章 ChatGPTで監査報告書を作る基本構成

監査報告書は通常、次の3部構成で作成されます。
AIへの指示(プロンプト)も、この構造に合わせると精度が高まります。

区分内容AI活用のポイント
① 概要(Executive Summary)審査対象の概要、実施期間、目的ChatGPTに「200字で要約して」と指示
② 主なリスクと対応発見された不備、リスク、是正提案「リスク→原因→対策」の構造で出力指定
③ 総括・今後の改善方向総評とフォローアップ計画「5行以内で提案を整理」と条件付け

🔹 プロンプト例:監査報告書の作成

【役割】あなたは内部監査の専門家です。  
【内容】以下の監査結果メモをもとに、経営層向けの監査報告書を作成してください。  
【形式】①概要②主要リスク③改善提案④今後の対応計画の4部構成で。  
【制約】専門用語は最小限にし、5分で読めるボリュームでまとめてください。

この指示を与えるだけで、
ChatGPTは要点を整理した報告書案を生成します。


第3章 AIが得意な3つの監査支援タスク

① リスク指摘の要約

AIは、膨大な指摘事項から共通パターンを抜き出すのが得意です。
「重要度の高い順に3つに要約して」と指示すれば、
監査報告会資料にそのまま使える形になります。

② 改善提案のドラフト化

「経費精算ルールの不備」や「在庫管理手続の曖昧さ」など、
定型的な改善提案はAIが自動で文案を作成できます。
人がそれをレビューし、企業文化に合わせて修正すればOK。

③ 経営層向けサマリー

監査結果を経営層に説明する際、
「専門用語が多く伝わりにくい」という課題もAIが解消します。
「中学生でも理解できるように」と付け加えるだけで、
平易な言葉でまとめ直してくれます。


第4章 AI監査の実務例:不正兆候分析との連携

不正検出編で紹介したように、AIは異常取引や不自然な金額の検出に強みがあります。
その分析結果を監査報告書の素材として活用すれば、
「AIによる検出結果+人の確認」という二重チェックが完成します。

🔹 応用プロンプト例

【役割】あなたは監査法人のマネージャーです。  
【内容】AI分析によって抽出された不正兆候リストをもとに、内部監査報告書を作成してください。  
【形式】①概要②検出結果③人による検証内容④再発防止策  
【制約】AIの検出結果をそのまま断定せず、“疑いの段階”として記載してください。

AIは“事実の列挙”を、人は“判断”を担当する。
この分業が最も重要なポイントです。


第5章 AI監査導入の注意点

AIを「補助監査人」として使う際には、以下のルールを守ることが必須です。

1️⃣ AIの出力をそのまま提出しない
 → 必ず監査責任者のレビューを経て承認する。

2️⃣ AIが参照するデータを匿名化する
 → 顧客名・取引先名・金額などは識別できない形で入力。

3️⃣ AI利用の記録を残す
 → 「プロンプト」「生成日時」「修正内容」を保存し、透明性を確保。

4️⃣ AIに“判断”をさせない
 → リスクレベルや是非の決定は必ず人間が行う。


第6章 AIが変える監査報告書の未来

AIが監査報告書を自動生成するようになっても、
最も重要なのは「誰が責任をもって伝えるか」です。

AIは、事実を整理する。
人は、その事実をもとに判断し、説明する。

この役割分担を明確にすれば、AIは「監査を支えるもう一人のスタッフ」になります。

報告書作成のスピードは上がり、内容の透明性も高まる。
AIは、監査の“敵”ではなく、“見落としを防ぐ味方”なのです。


まとめ:AIは「信頼を見える化する」道具になる

監査の本質は、数字を正すことではなく、信頼を築くこと
AIはその信頼を「データと言葉で見える化する」最強のツールです。

AIが書いた報告書を、人が責任をもって確認し、署名する。
それこそが、AI時代の「誠実な監査」の形です。

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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