経理部の1日は、ルーティン業務の連続です。
経費精算、月次決算、予算管理、資料作成――。
どれも欠かせない仕事ですが、「時間がいくらあっても足りない」と感じている人も多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解決するのが、生成AI(ChatGPTなど)です。
AIを「正しく指示」すれば、
あなたの代わりに考え、整理し、提案してくれる“経理アシスタント”になります。
第1章 AIが得意なのは「整理」と「構造化」
生成AIは、単に文章を作るツールではありません。
経理の世界で最も役立つのは、情報を整理し、構造化する力です。
たとえば――
- 手当や旅費のルールを「要件別にまとめて」と頼む
- 決算データを「経営層向けの報告書形式で」と依頼
- 予実データを「差異の大きい順に表で整理して」と指定
これらの指示は、AIが最も得意とする領域です。
一度使ってみると、「もうExcelで1から書くのが馬鹿らしくなる」と感じるほどの効率化が実現します。
第2章 経理がすぐ使える!AI活用3つの実例
① 経費精算ルールをAIに作らせる
在宅勤務の普及により、「どこまで経費にできるのか」という質問が増えています。
AIに次のように聞いてみましょう。
【役割】あなたは経理規定の専門家です。
【内容】テレワーク導入に伴う在宅勤務手当(通信費・光熱費補助)の経費精算ルールを作成してください。
【形式】支給対象者・金額基準・必要書類・税務上の扱いを整理した表を作成してください。
【制約】現行法令に準拠し、従業員と会社双方にとって合理的な内容にしてください。
わずか数十秒で、規程案のたたき台が完成します。
そこから人が加筆修正すれば、作業時間を数時間単位で削減できます。
② 月次決算レポートをAIにまとめさせる
経理担当者の頭を悩ませるのが、「経営層向けの報告書づくり」。
AIは、数値データから要約とストーリーを組み立てるのが得意です。
【役割】あなたは財務アナリストです。
【内容】以下の月次決算データをもとに、経営層向けのレポートを作成してください。
【形式】①サマリー(200字)②主要指標の分析③特記事項の3部構成で。
【制約】専門用語は最小限にし、グラフの活用ポイントも提案してください。
このように依頼すれば、AIは
「売上は前月比+12%、主因は新製品の寄与」などの要約付き分析を自動で提示してくれます。
③ 予実管理をAIに分析させる
予算と実績の乖離分析は、数字を追うだけで終わりがちです。
でもAIなら、その背景まで掘り下げてくれます。
【役割】あなたは管理会計の専門家です。
【内容】添付した部門別予算と実績データを分析し、乖離の大きい項目と要因を特定してください。
【形式】①全社の予実差異概要②部門別差異一覧(表形式)③主要差異の要因分析④改善提案
【制約】デザイン思考で、数字の背景にある課題を抽出してください。
AIは「人件費の増加=採用時期前倒し」「販売費増=広告施策の集中」など、
経営的な洞察を含んだ分析を生成できます。
第3章 AI活用の効果を最大化するポイント
1️⃣ ルーティン業務から始める
まずは定型レポートやマニュアル作成など、リスクの低い領域で試してみましょう。
2️⃣ 良いプロンプトをチームで共有
うまくいった質問文を「社内AIマニュアル」として蓄積することで、チーム全体の効率が上がります。
3️⃣ AIを“最終決定者”にしない
AIは提案者。最終判断は必ず人間が行うことを徹底します。
第4章 AIで経理の仕事はこう変わる
| Before(従来) | After(AI導入後) |
|---|---|
| 手作業で規程作成 | AIがドラフトを提示、人は確認・修正に集中 |
| データ整理に追われる | AIが自動要約、人は分析と提案に時間を使う |
| 「作業型経理」 | 「考える経理」「提案する経理」 |
AIを導入した瞬間から、経理は“書類を作る仕事”ではなく“経営に提案する仕事”へと変わります。
まとめ:AIがいる経理部の未来
生成AIは「速さ」をもたらすだけでなく、新しい発想を引き出します。
AIが数字を整理し、人が判断する――。
そんな役割分担こそが、これからの経理部の理想的な姿です。
「ChatGPTをどう使えばいいかわからない」
そんな人こそ、まずは今日紹介した3つのプロンプトを試してみてください。
あなたの仕事の“当たり前”が、きっと変わります。
🖋️出典:『企業実務 2025年6月号』
アクタス税理士法人 藤田益浩「経理業務の効率化を図る『生成AI』活用術」より再構成。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
