「内部統制=チェック作業」
そう思っていませんか?
確かに、従来の内部統制は“事後的な確認”が中心でした。
しかし、AIの登場によって、統制のあり方そのものが変わり始めています。
AIは、「不正や誤りを未然に防ぐ統制」を現実のものにしつつあります。
経理がAIを使って「ガバナンスの前線」に立つ――そんな時代が、すぐそこまで来ています。
第1章 AI内部統制の時代が来た
AIはもう“便利ツール”ではなく、“監査の目”を持つ存在です。
特に経理部門においては、次の3つの分野で力を発揮します。
1️⃣ リアルタイムモニタリング
取引・承認・経費申請のデータをAIが継続的に監視。
異常値や不自然な承認フローを自動検出します。
2️⃣ ルール違反の即時通知
承認権限を超える支出や、手続き漏れを瞬時にアラート。
事後チェックではなく“事前抑止”が可能に。
3️⃣ 監査証跡の自動生成
AIが全操作を時系列で記録し、監査時にそのまま提示できます。
これらを組み合わせることで、AIは「人が監視する」から「AIが監視を支援する」統制へと進化させます。
第2章 AIを内部統制に活かす実践プロンプト
生成AI(ChatGPTなど)は、統制文書やリスク管理にも活用できます。
以下のようなプロンプトを設定してみましょう。
🔹 ① 内部統制マニュアルの整備
【役割】あなたは内部統制の専門家です。
【内容】経費精算に関する内部統制マニュアルのドラフトを作成してください。
【形式】目的・リスク・統制手続・確認方法の4項目構成。
【制約】中小企業にも実践可能な内容で、監査対応を意識してください。
→ AIが「リスク一覧」と「対応策(例:二重承認・証憑確認)」まで整理してくれます。
🔹 ② 職務分掌のチェック
【役割】あなたは内部監査の専門家です。
【内容】以下の業務分掌表を確認し、承認・入力・保管の分離が適切か判定してください。
【形式】改善提案を表形式で提示。
→ 承認者と実施者が同一の箇所をAIが自動的に指摘。
🔹 ③ AI監査レポートの作成
【役割】あなたは監査法人のマネージャーです。
【内容】AIが検出した不正リスクデータをもとに、内部監査報告書を作成してください。
【形式】①概要②主要リスク③是正提案の3部構成。
【制約】経営層が5分で理解できるように簡潔にまとめてください。
AIを「報告書作成補助」として使えば、監査部門の負荷を大幅に軽減できます。
第3章 AI内部統制の導入ステップ
| ステップ | 内容 | 実施ポイント |
|---|---|---|
| ① 現状の統制を整理 | 既存フロー・チェックリストを棚卸 | ExcelやChatGPTで要約整理 |
| ② リスク箇所をAIで洗い出し | データの異常検出を活用 | 第3回「不正検出編」と連携 |
| ③ 改善策をAIに提案させる | ChatGPTで「是正案」を生成 | 現場目線で修正を加える |
| ④ 統制ルールを更新・共有 | AI出力をWord・Teamsに展開 | 社内でレビュー・承認 |
| ⑤ モニタリングを継続 | 月次でAIチェック | 「定常化」が成功の鍵 |
このプロセスを回すことで、AIを“継続的統制のエンジン”として活用できます。
第4章 AI統制の課題と注意点
AIによる内部統制には、便利さと同時にいくつかのリスクもあります。
- 誤検出(False Positive)
AIがリスクでないものを「疑わしい」と判定する場合があります。
→ 人のレビューを必ず挟むこと。 - データセキュリティ
社内データを外部AIに入力する際は、機密情報を匿名化する。 - 法令・会計基準の更新反映
AIの回答が最新ではないこともあるため、監査基準は必ず人が確認。
AIを「判断の代行者」にせず、「補助的な専門スタッフ」として位置づけることが重要です。
第5章 経理がガバナンスの主役になる
AIの導入で、経理の役割は大きく変わります。
これまで「仕訳とチェック」が中心だった経理は、
これから「AIを使って会社を守る」ポジションへと進化します。
AIは、不正や誤りを“見逃さない”だけでなく、
リスクが発生する前に“気づく”力を持っています。
その力をどう活かすか――。
それは、AIではなく、経理自身の姿勢にかかっています。
まとめ:AIが変える「信頼のつくり方」
AIは内部統制を「書類のため」から「信頼のため」に変えます。
人がAIを信頼し、AIが人の判断を支える。
その関係こそ、これからの経理・監査・管理部門が築くべき新しいガバナンスの形です。
AIが守るのは、数字ではなく、組織の信頼。
それが、次世代の内部統制です。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
