月次決算は、経理にとって最も神経を使う仕事のひとつです。
チェックリストを片手に仕訳を確認し、科目を照合し、資料を整える――
気づけば締日前夜、残業の山。
しかし、AIを上手く使えば「確認作業の半分」が自動化できます。
AIはもはや、報告の補助ツールではなく、
“月次を提案書に変える相棒”なのです。
第1章 AIが支援する「月次決算チェック」
まずAIが最も力を発揮するのが、「異常検知」と「整合性チェック」です。
🔹 プロンプト例:月次確認チェックリスト
【役割】あなたは経理部門の月次レビュー担当です。
【内容】以下の試算表をもとに、前月比・前年同月比で異常値を抽出してください。
【形式】①科目名②増減率③想定要因(仮説)④確認アクションを表形式で。
【制約】特に売上・人件費・交際費・減価償却を重点的に。
AIはわずか数十秒で、
「交際費+35%=決算懇親会支出の可能性」
「売上高+20%=特需案件反映」
といった“人が気づくべき点”を整理してくれます。
第2章 月次報告を“読む資料”から“語る資料”に変える
AIの真価は、数字を“意味”に変えること。
「この月はなぜ利益が上がったのか」「どんな改善が必要か」
AIに要約を依頼すれば、経営会議で使える説明文がすぐに生成されます。
🔹 プロンプト例:経営層向け要約
【役割】あなたは経営層に報告する経理担当です。
【内容】以下の月次データをもとに、業績の要約と課題・改善提案を作成してください。
【形式】①概要②要因分析③改善提案の3部構成。
【制約】経営層が3分で理解できる内容にしてください。
結果として、月次報告は「説明のための資料」から
「意思決定を促す提案書」に変わります。
第3章 AIが作る「見える月次」― ダッシュボード活用
ChatGPTやCopilotをExcel/BIツールと連携させれば、
月次KPIをグラフ化して経営がリアルタイムで見る仕組みがつくれます。
| ツール | 主な役割 | 活用例 |
|---|---|---|
| Excel Copilot | データ分析と自然言語操作 | 「売上トレンドをグラフにして」 |
| Power BI + ChatGPT | 見える化+要約 | ダッシュボード+AIコメント |
| Google Sheets + Gemini | 簡易月次ダッシュボード | 各部門KPIの自動生成 |
AIが数字を見せ、経理が意味を語る。
月次会議の主役は、報告書ではなく“対話”に変わる。
第4章 AIが「月次業務の流れ」を再設計する
AIを活かした月次の新しい流れは、こう変わります。
| 従来の流れ | AI導入後の流れ |
|---|---|
| 試算表をExcelで集計 | AIが自動読み込み・整形 |
| 異常値を目視確認 | AIが自動抽出しアラート |
| 原因分析を人が手作業で | AIが仮説とコメントを提案 |
| 月次報告書を作成 | AIが要約と提案を生成 |
| 経営会議で報告 | 経理がAI分析を基に提案 |
AIが“作業”を担い、経理が“意味”を整理することで、
月次は締める作業から、考える時間へ変わります。
第5章 AI導入の注意点 ― 精度より「透明性」
AIを月次業務に使うときに最も大切なのは、
“完璧な正解”よりも、“説明できる過程”です。
- なぜAIがその異常を指摘したのか
- どんなデータを参照したのか
- 誰が最終確認をしたのか
これらを明確にしておけば、AI導入後の監査や経営報告でも混乱しません。
AIを導入するときは、「判断プロセスの見える化」をセットで行いましょう。
まとめ:AIで「締める」から「動かす」月次へ
AIが月次のチェックを、経理が提案を――。
この役割分担こそが、次世代の月次業務の理想形です。
AIがスピードと精度を担い、
人間が判断と創造を担う。
数字を整える仕事から、数字で語る仕事へ。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
