かつて経理の仕事は、経営の“後ろ側”にありました。
数字をまとめ、報告書を作り、決算を締める。
それが経理の主な役割だった時代です。
しかし今、AIが業務を支えることで、
経理は単なる“記録者”ではなく、経営の意思決定を導く存在へと変わりつつあります。
AIがデータを整理し、経理が「意味を見つけ、提案する」。
その瞬間、経理は経営の“パートナー”になります。
第1章 AIが変える「経理と経営の距離」
AI導入後、経理と経営の関係性は劇的に変化します。
| 従来の関係 | AI導入後の関係 |
|---|---|
| 経理:報告する/経営:判断する | 経理:提案する/経営:選択する |
| 数字の伝達 | 数字の“意味”の共有 |
| 決算後に報告 | リアルタイムで議論 |
AIは膨大な数字を“瞬時に見える化”し、
経営層と経理が同じタイミングで同じ情報を見ながら考えることを可能にしました。
それにより、経理は「経営の補助部門」から「経営の共創部門」へ。
まさに、経理が経営をつなぐ時代が到来しています。
第2章 AIが実現する“経営ダッシュボード”
AIと経理をつなぐ代表的なツールが、「経営ダッシュボード」です。
ChatGPTやBIツールと連携することで、
経理は数字を“動的な経営資料”として提示できるようになります。
🔹 AIダッシュボードでできること
| 機能 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| KPIの自動更新 | 売上・利益・CFをリアルタイムで反映 | 「月次報告待ち」が不要に |
| トレンド分析 | 前期比・前年比・部門別推移を自動可視化 | 判断のスピードアップ |
| AIコメント生成 | 「売上低下の要因」「改善提案」を自動作成 | 経営会議の議題が明確に |
AIがデータを整理し、経理が「何を伝えるか」を設計する――
それが、AI経営ダッシュボードの本質です。
第3章 経理がAIと共に“提案する”3つの領域
経理がAIを活用して経営に貢献できる領域は、すでに3方向に広がっています。
① 財務戦略の提案
AIがキャッシュフローを予測し、資金不足リスクを事前に警告。
経理は「資金繰り表を作る人」から、「資金戦略を提案する人」へ。
② コスト構造の改善
AIが経費データを部門別・取引先別に分類し、ムダを可視化。
経理は「コスト削減の進め方」まで示せるようになります。
③ 収益モデルの再設計
AIが売上・顧客・価格データを分析し、利益構造を再構築。
経理が「価格戦略」「投資回収シナリオ」を提案できる時代へ。
AIの分析を土台に、経理が自分の言葉で提案する――
これこそが“提案型経理”の真価です。
第4章 提案型経理のためのAIプロンプト設計
AIを経営提案に活用するためには、質問の質がカギを握ります。
🔹 経営提案プロンプト例
【役割】あなたは経営分析の専門家です。
【内容】以下の月次データをもとに、経営改善提案を3つ作成してください。
【形式】①現状分析②課題③改善提案(財務・業務・人材の視点から)
【制約】中小企業が3か月以内に実行できる内容にしてください。
AIは「売上構成の偏り」「在庫増によるCF悪化」「業務プロセスのボトルネック」などを整理し、
“実行可能な経営施策”の下書きを作ってくれます。
経理はそのAI出力を、会社の実情に合わせて“翻訳”すればよいのです。
第5章 AIで変わる経営会議 ― 経理が“司令塔”になる
AIによる経営分析の導入で、経営会議の質はこう変わります。
| Before | After |
|---|---|
| 数字報告中心 | 戦略議論中心 |
| 「数字の説明」に時間を費やす | 「意思決定」に時間を使う |
| 経理が報告者 | 経理がファシリテーター |
経理がAIを操作しながら、
「このデータを見ると、次月の利益率改善にはこの投資が必要です」
と提案できる――
そんな“経営の司令塔”としての経理像が現実になっています。
第6章 AIが作る「共通言語」としての数字
AIは、複雑な財務データを平易な言葉に変換します。
たとえば、ChatGPTにこう指示すれば――
【役割】あなたは経営層向けの説明担当です。
【内容】以下の財務データを、非会計担当者にも理解できるように説明してください。
【制約】専門用語を使わず、物語風に要約してください。
AIは、「売上は増えたが、利益が減った理由はコストの上昇です」など、
誰でも理解できる“数字の物語”を生み出します。
数字が「壁」ではなく「共通言語」になる――
それがAIが生み出す最大の変化です。
第7章 経理が経営に近づく、その先にあるもの
AIを使いこなす経理は、いずれこう呼ばれるようになります。
「数字で語る経営者」
もはや、経理と経営の境界線はなくなる。
AIがその壁を取り払い、両者をつなげる架け橋になる。
数字を扱う力 × AIを活かす力 × 経営を動かす力。
この3つを併せ持つ人が、次世代の“経営経理人材”です。
まとめ:AIは経理を「経営の言葉で語る存在」に変える
AIが生み出すのは、単なる効率化ではありません。
それは、経理が経営と対等に語り合うための力です。
経理が数字を超えて提案できるようになったとき――
経営は初めて「数字で考える組織」になります。
AIが橋を架け、
経理がその橋を渡る。
そこから始まるのが、提案する経理の時代です。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
