相続税の申告は「10か月以内に申告」というルールがあるため、時間との勝負です。相続財産の評価だけでも大変ですが、必要書類を揃えるのに意外と時間がかかります。役所や金融機関での発行手続きが必要なものも多いため、準備が遅れると申告期限ギリギリになってしまうことも珍しくありません。
今回は、国税庁のパンフレット(令和7年分用)をもとに、申告に必要な書類と、その準備のステップを整理します。
1. 相続人関係を証明する書類
まずは「誰が相続人なのか」を証明する書類です。
- 被相続人(亡くなった方)の 戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの)
- 被相続人の 住民票除票 または 戸籍の附票
- 相続人全員の 戸籍謄本
- 相続人全員の 住民票
これらは市区町村役場で取得できます。特に「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」は複数の役所をまたぐことが多く、発行に時間がかかるため早めに動くことが重要です。
2. 財産に関する書類
財産ごとに必要な書類は異なります。
(1) 預貯金
- 残高証明書(死亡日現在)
- 通帳の写し
金融機関ごとに請求が必要です。窓口で「相続関係」であることを示し、戸籍なども提示する必要があります。
(2) 不動産
- 登記事項証明書(法務局で取得)
- 固定資産税評価証明書(市区町村役場で取得)
評価額の計算や特例の適用に必要です。
(3) 株式・投資信託
- 証券会社の残高証明書
- 株式の評価資料(上場株式は相場表、非上場株式は会社の決算書など)
(4) 生命保険金
- 保険会社の支払証明書
- 保険契約の内容を示す資料
(5) その他
- 車検証(自動車)
- 鑑定評価書(宝石・美術品など高額な動産がある場合)
3. 負債・葬式費用の書類
相続税では、被相続人が残した借金や葬式費用を差し引くことができます。
- 借入金の残高証明書
- 未払医療費の領収書や請求書
- 葬儀費用の領収書(通夜・告別式・火葬費用など)
香典返しの費用や法要の費用は対象外なので注意が必要です。
4. 遺産分割に関する書類
相続人全員で合意した内容をまとめた書類が必要です。
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名押印が必要)
- 印鑑証明書(各相続人のもの)
遺言書がある場合は、公正証書遺言ならそのまま使用できますが、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
5. 相続人本人確認に関する書類
相続人全員の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)の写しを提出します。
併せて、相続人全員のマイナンバー(個人番号)が必要になります。
6. 書類準備のステップ
相続税の申告に必要な書類を効率よく集めるには、以下の流れが理想的です。
ステップ1:戸籍・住民票を揃える
相続人を確定するために、まずは被相続人の戸籍を出生から死亡まで揃えるところから始めます。
ステップ2:財産の洗い出し
預金、不動産、株式、保険などの存在をリストアップ。必要に応じて金融機関や法務局に連絡し、残高証明や登記事項証明を取り寄せます。
ステップ3:負債・葬式費用の確認
借金や医療費、葬儀費用を整理し、領収書や証明書を保存します。
ステップ4:遺産分割協議
相続人全員で話し合い、誰がどの財産を相続するのかを決定。遺産分割協議書を作成します。
ステップ5:申告書の作成と提出
必要書類を揃え、相続税申告書を作成し、税務署に提出します。
7. 注意点とアドバイス
- 書類収集は時間がかかるため、相続発生直後から着手すること
- 相続人が遠方に住んでいる場合、郵送でやり取りすることも多いため余裕を持つこと
- 遺産分割協議が長引くと、申告期限に間に合わない可能性があるので早めの合意を目指すこと
- 専門家(税理士)に依頼すると、書類収集や協議の調整もスムーズになる
まとめ
- 相続税申告には「相続人関係」「財産関係」「負債関係」「遺産分割関係」「本人確認」の5種類の書類が必要
- 書類は役所・法務局・金融機関など複数の窓口で取得するため、早めの準備が不可欠
- 準備のステップを踏めば、申告書作成までの道筋が明確になる
- トラブルを避けるためにも、遺産分割協議は早めに進めることが大切
次回は「相続税の納付方法」について解説します。現金一括納付が原則ですが、延納や物納の制度もあります。
参考資料
- 国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
