農業の若返りは本物か― データが示す転換点と持続可能性への課題 ―

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2025年、全国の農家の平均年齢が67.6歳となり、比較可能な1995年以降で初めて低下しました。わずか0.2歳の低下ですが、これまで上昇を続けてきた流れが転じたという点で象徴的な出来事です。

本稿では、三重県や山梨県の事例を手がかりに、農業の若返りの実態と、その持続可能性について考察します。


1.平均年齢低下の意味 ― 構造変化の兆し

農林水産省の農林業センサスによると、基幹的農業従事者は102万人と、5年間で34万人減少しました。一方で、40~50歳代の割合は17.2%へと上昇しています。

27都府県で平均年齢が低下し、三重県は1.2歳の低下と全国最大でした。ただし、この若返りは単純な若手増加だけでなく、高齢層の大量離脱という側面も含んでいる可能性があります。

若返りは「若い人が増えた」現象であると同時に、「高齢層が急減している」結果でもある点に注意が必要です。


2.三重県伊賀市 ― 設備仲介と高収益作物の戦略

三重県伊賀市では、イチゴ栽培が40~50歳代の新規就農を呼び込んでいます。高単価で収益を見込みやすいことが背景にあります。

イチゴ栽培にはビニールハウスや自動温度管理設備が不可欠で、初期投資は数千万円規模に及びます。三重県は中古ハウスをデータベース化し仲介する仕組みを整備し、参入コストを抑えています。

さらに「就農サポートリーダー」制度を設け、技術指導、経営相談、農地・住居確保の支援まで行っています。単なる補助金ではなく、伴走型支援を重視している点が特徴です。


3.山梨県 ― 高付加価値作物と段階的支援モデル

山梨県ではシャインマスカットなど高級ブドウ栽培への新規参入が進んでいます。2024年度の新規就農者は341人で、49歳以下が7割を占めました。

同県は情報収集、作業体験、長期研修、就農、定着までを2~3年かけて段階的に支援しています。さらに就農応援サイトを開設し、情報を一元化しました。

一方、生産量日本一のモモは減少傾向にあります。収益性の高い作物への集中が進む一方、基幹作物の担い手不足という新たな課題も浮かび上がっています。


4.DXと事業承継 ― 若返りのもう一つの軸

神奈川県ではJA横浜がDXを活用し、鳥獣被害の即時通報や動画による技術共有を進めています。デジタル技術は若年層との親和性が高く、参入障壁を下げる役割を果たしています。

群馬県では農業法人における計画的な事業承継が進んでいます。10年単位で準備し、経営状況を数値化し透明性を高めることが重要とされています。

新規参入と同時に、既存経営体の世代交代も若返りの大きな柱です。


5.国際比較 ― 日本農業の年齢構造の現実

米国の農業従事者の平均年齢は58.1歳で、日本より9歳以上若い水準です。65歳以上の割合も日本の約7割に対し、米国は4割弱と大きな差があります。

日本の若返りは始まったばかりであり、国際的に見れば依然として高齢構造にあります。


6.持続可能な若返りに必要な条件

若手の参入は増えていますが、経験不足や資金返済の滞りといったリスクも顕在化しています。

持続可能な農業へ転換するためには、

・耕地の集積と規模拡大
・経営の数値化と見える化
・伴走型の技術・経営支援
・計画的な事業承継
・地域ブランドによる付加価値戦略

といった複合的な施策が不可欠です。

農業の若返りは「人の問題」であると同時に「経営構造の問題」です。若い人が入るだけでなく、残り、成長できる環境整備が本質的な課題となります。


結論

農家の平均年齢低下は、日本農業にとって重要な転換点です。しかしそれは入口に過ぎません。

三重県や山梨県の事例は、収益性の高い作物、初期投資の軽減、段階的支援、DX活用、計画的承継といった具体策が若返りを支えていることを示しています。

今後は、若返りを一時的な現象で終わらせず、地域農業全体の構造改革へとつなげられるかが問われます。


参考

・日本経済新聞 2026年2月21日朝刊「農家の年齢、初の低下 平均67.6歳、27都府県で若返り」
・日本経済新聞 2026年2月21日朝刊「山梨、高級ブドウ 若手栽培 県、作業体験から就農・定着支援」

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