全国国税局長会議が示した税務行政の次の一手― キャッシュレス納付拡大と滞納対策の本気度 ―

効率化
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

税務行政の方向性は、現場の実務に直結します。

令和8年2月に開催された全国国税局長会議では、キャッシュレス納付の利用拡大、確定申告対応、滞納の未然防止と整理促進など、実務に大きな影響を与えるテーマが議論されました。

単なる内部会議の報告ではなく、税務行政の重点がどこに置かれているのかを読み解くことは、これからの実務を考える上で重要です。

本稿では、そのポイントを整理します。


キャッシュレス納付拡大は「本気モード」へ

今回の会議で意見交換議題となったのが、キャッシュレス納付の利用拡大です。

背景には、昨年11月の財務局長会議における財務大臣の発言があります。国としてキャッシュレス納付を推進する明確なメッセージが出され、財務局との連携・協調を強化する方針が確認されました。

すでに国税の納付方法は多様化しています。

・ダイレクト納付
・振替納税
・クレジットカード納付
・インターネットバンキング
・スマホアプリ納付

それでもなお「利用拡大」を議題にしているということは、現場レベルではまだ十分とはいえない状況があると考えられます。

特に個人事業者や小規模法人では、いまだに金融機関窓口での納付が一定割合を占めています。

税務行政としては、事務効率化と徴収コスト削減の観点から、キャッシュレス化は避けて通れないテーマです。

今後は「推奨」から「前提」へと、実務の空気が変わっていく可能性があります。


確定申告対応とマイナンバーカードの位置づけ

令和7年分確定申告への対応も重要議題となりました。

特に注目すべきは、ID・パスワード方式の新規発行停止を踏まえ、マイナンバーカードによるスマホ申告を一層進める方針です。

これは事実上、
「e-Taxはマイナンバーカード方式が標準」
というメッセージに近いものです。

また、申告書処理にあたっては、税務署と業務センターの連携強化が強調されています。

職員負担の偏りを防ぎつつ、納税者ニーズに対応する体制整備が求められています。

今年は閉庁日対応の最終年であり、来年以降は実施しない予定とのことです。

つまり、対面・時間外対応は縮小方向であり、デジタル申告への移行がさらに加速することが想定されます。


滞納対策は「未然防止」へ重心移動

確定申告期後は、個人の所得税や消費税の滞納が集中します。

今回の会議では、

・関係部署間の連携強化
・調査選定段階からの情報共有
・賦課と徴収の一体的対応

といった方針が確認されました。

これは単なる「滞納整理」ではなく、「滞納発生前からの対応強化」を意味します。

特に消費税事案や大口・悪質事案への積極的処理が明示されている点は重要です。

今後は、調査段階での資金繰り状況の把握や、納付能力の確認がより厳密になる可能性があります。

滞納発生後の対応だけでなく、申告・納付計画段階での助言が実務上ますます重要になると考えられます。


税務行政DXの本質

自由討議では、「環境変化に応じた体制整備」と「税務行政のDX」が議論されました。

幹部を含め、全職員が業務改善・効率化に主体的に取り組む土台づくりが強調されています。

これは単なるIT導入ではありません。

業務プロセスそのものの見直し、データ活用、組織横断的な連携強化といった構造改革を含むものです。

納税者側から見れば、

・オンライン完結型の手続き拡大
・問い合わせ対応の標準化
・処理スピードの均質化

といった形で現れる可能性があります。


実務への示唆

今回の会議内容から読み取れる実務的示唆は次のとおりです。

第一に、キャッシュレス納付は「任意の選択肢」から「標準的手段」へ移行しつつあること。

第二に、マイナンバーカードを軸とした申告体制が本格化すること。

第三に、滞納対策は早期着手・事前把握型へと進化していること。

特に消費税は、申告後の納税資金確保が極めて重要です。資金繰りを伴わない税務対応は、今後リスクを高める可能性があります。

税務行政の変化は、静かですが確実に進んでいます。


結論

令和8年2月の全国国税局長会議は、

・納付のキャッシュレス化
・申告のデジタル化
・滞納の未然防止強化

という三つの方向性を明確に示しました。

税務実務は、従来型の対面・紙中心の世界から、データとオンラインを前提とした世界へ着実に移行しています。

納税者・実務家ともに、この変化を「制度の話」として受け止めるのではなく、業務設計そのものを見直す契機とすることが求められています。

税務行政の動向を読み解くことは、未来の実務リスクを減らすことにつながります。


参考

・税のしるべ「令和8年2月・全国国税局長会議、キャッシュレス納付の利用拡大に向け議論」2026年2月16日号
・国税庁発表資料(全国国税局長会議関連資料)

タイトルとURLをコピーしました