円安時代の資産防衛 通貨分散と現物資産という選択

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物価上昇が続き、円安が長期化するなかで、私たちの資産の置き場所は大きなテーマになっています。

かつては「預金中心」が当たり前でした。しかし、インフレが進み、円の購買力が徐々に低下していく局面では、資産の守り方そのものを見直す必要があります。

最近は、個人だけでなく、宗教法人や中小法人なども資産運用を強化する動きが広がっています。背景にあるのは、円の価値に対する不安と、将来世代への資産承継のあり方の変化です。

本稿では、円安時代における資産防衛の構図を整理し、通貨分散と現物資産という二つの軸から考察します。


円安とインフレがもたらす実質価値の低下

2022年以降の急速な円安は、輸入価格の上昇を通じて国内物価を押し上げました。消費者物価指数は長期間にわたり前年比2%を超える状況が続いています。

物価が上昇すると、現金や円預金の実質的な価値は低下します。名目上の金額は変わらなくても、同じお金で購入できる財やサービスが減るためです。

インフレ局面では「金利がつくから安心」という発想は通用しにくくなります。預金金利が物価上昇率を下回る限り、実質的には目減りが続くからです。

こうした環境が、資産運用への関心を高めています。


通貨分散という防衛策

資産防衛の第一の選択肢は、通貨分散です。

外貨建て預金や外国株式、海外ETF、外貨建て投資信託などを通じて、資産の一部をドルやその他の通貨で保有する動きが広がっています。

とりわけ高齢層の間では、ドル建てで資産を次世代に承継したいというニーズが増えています。背景には二つの意識があります。

一つは、円安がさらに進行した場合のリスクヘッジです。
もう一つは、若い世代の通貨感覚の変化です。海外投資に抵抗が少なく、円以外の通貨で資産を受け取ることに違和感を持たない世代が増えています。

ただし、通貨分散には為替変動リスクがあります。円安が進めば利益が出ますが、円高局面では評価額が下がります。

資産防衛とは、リスクをゼロにすることではなく、リスクを分散させることです。円だけに集中させないという発想が重要になります。


「通貨より現物」という発想

もう一つの選択肢が、現物資産へのシフトです。

代表例は不動産です。特に都市部では、若年層がペアローンや超長期ローンを活用して高額物件を取得する動きが見られます。

背景には、次のような考え方があります。

・インフレが進めば、将来の貨幣価値は下がる
・長期固定の借入は実質的に有利になる可能性がある
・家賃を払い続けるより、資産として残るものを持ちたい

つまり、通貨価値の低下に対して、実物資産で対抗するという考え方です。

ただし、不動産価格が常に上昇するわけではありません。流動性や維持コスト、金利上昇リスクも考慮する必要があります。

「現物=安全」という単純な図式は成り立ちません。


法人・団体にも広がる資産運用

個人だけでなく、法人や宗教法人なども資産運用を強化する動きがあります。

インフレ下では、建築費や修繕費などのコストが想定を超えて膨らむ可能性があります。預金中心の資産構成では、将来の大型支出に対応できないという危機感が背景にあります。

そのため、国内外の株式や投資信託を組み合わせて運用益を確保し、将来の設備投資や建替資金を準備するケースも見られます。

これは「投機」ではなく、「財務戦略」としての運用です。


資産防衛の本質はバランス設計

円安時代の資産防衛に正解はありません。

重要なのは、次の三点です。

第一に、通貨の分散。
第二に、資産クラスの分散。
第三に、ライフステージに応じたリスク許容度の確認。

全額を外貨に替えるのも極端ですし、全額を円預金に置くのも偏りがあります。

また、高齢期に過度な価格変動リスクを取ることは慎重に検討すべきです。逆に、若年層であれば長期投資を前提にリスク資産を取り入れる余地があります。

資産防衛とは、防御一辺倒ではなく、守りながら増やす設計を考えることです。


結論

円安とインフレが続く環境では、資産の置き場所を再設計する必要があります。

通貨分散と現物資産という二つの軸は、有力な選択肢です。ただし、いずれも万能ではなく、リスクを伴います。

重要なのは、環境変化に応じて資産構成を見直す柔軟性です。

円の行方を予測することは困難ですが、資産の分散設計は自らコントロールできます。

資産防衛とは、未来を当てることではなく、未来に備えることです。


参考

日本経済新聞 2026年2月19日朝刊
漂流する円3 資産防衛、住職も米株投資

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